こんにちは、小児歯科専門医の中村 友昭です。
先日、10月11日に山形県で開催された日本小児歯科学会北日本地方会に参加してきました。
当日は、小児歯科に関するさまざまな講演を聴き、改めて多くのことを学ぶ貴重な機会となりました。また、大学勤務時代の同僚たちとも久しぶりに再会し、お昼には齋藤教授と一緒に山形の「栄屋本店」で名物の冷やしラーメンをいただきました。
学会では、先輩や後輩のポスター発表にも参加し、質問や意見交換を通じて新たな知見を得ることができました。さらに、後輩のポスター発表が「SHOFU AWARD」を受賞するという嬉しい出来事もあり、みんなでお祝いしました。
久しぶりの再会を楽しみながら、小児歯科について改めて学ぶことができ、とても充実した一日となりました。
さて、今回は発達障害のあるお子さんへの接し方についてお話ししたいと思います。
「歯医者さんに行くと、どうしても泣いてしまう」
「何度説明しても、なかなか言うことを聞いてくれない」
「診療台に座ることが難しい」
お子さんの歯科受診について、このようなお悩みを持つ保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、こうした様子は発達障害のないお子さんにも見られます。ただ、発達障害のあるお子さんの場合には、その子ならではの感じ方や理解の仕方が関係していることもあります。
今回は、発達障害のあるお子さんへの接し方について、歯科医院で大切にしたいことをご紹介します。
発達障害ってどんなもの?
発達障害は、生まれつきの脳の働き方の違いに関係するものです。決して本人の努力不足や、保護者の方のしつけが原因ではありません。
代表的なものには、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)などがあります。
例えば、ASDのお子さんは、急な予定変更が苦手だったり、音や光、触られる感覚に敏感だったりすることがあります。
ADHDのお子さんは、じっと座っていることや、一つのことに集中し続けることが難しい場合があります。
ただし、同じ診断名でも特徴は一人ひとり異なります。また、診断がついていなくても、同じような困りごとを抱えているお子さんもいます。
大切なのは、診断名だけで判断せず、その子が何に困っているのかを理解することです。
「言うことを聞かない」には理由があるかもしれません
例えば、歯科医院で「ちゃんと座ってね」と声をかけても、なかなか座れないお子さんがいたとします。
大人にとっては簡単な言葉でも、お子さんには「ちゃんと」が何を意味するのか分かりにくい場合があります。
そんなときは、「椅子に座って、背中をつけてね」と具体的に伝えることで、理解しやすくなることがあります。
また、一度にたくさん説明するよりも、短い言葉で一つずつ伝える方が分かりやすいお子さんもいます。
言葉だけで伝わりにくい場合には、写真やイラスト、実際の道具を見せることも効果的です。
「どうしてできないの?」ではなく、「どうすればできるかな?」と考えることが、関わり方の大切なポイントです。
歯科医院には苦手な刺激がたくさんあります
歯科医院には、機械の音、明るい照明、独特のにおい、口の中を触られる感覚など、さまざまな刺激があります。
私たちには何でもないことでも、感覚が敏感なお子さんにとっては、とても不快だったり、怖かったりすることがあります。
そのため、診療台に座れない、口を開けられない、突然泣き出してしまうといった行動にも、何らかの理由が隠れているかもしれません。
こうした場合には、いきなり治療を始めるのではなく、器具を見せたり、音を聞いてもらったり、これから何をするのかを説明したりすることが役立ちます。
また、必要に応じて休憩を取るなど、安心して診療を受けられる環境を整えることも大切です。
できたことを一緒に喜びましょう
お子さんが少しでもできたことがあれば、ぜひ具体的にほめてあげてください。
「椅子に座れたね」
「お口を開けられたね」
「先生のお話を聞けたね」
小さな成功体験を積み重ねることで、歯科医院に対する安心感や自信につながることがあります。
最初からすべての処置ができる必要はありません。お子さんのペースに合わせて、少しずつできることを増やしていくことが大切だと考えています。
保護者の方と一緒に考えていきたいこと
発達障害のあるお子さんへの対応に、すべてのお子さんに共通する正解があるわけではありません。
ご家庭ではどのような声かけが伝わりやすいのか、どんな音や感覚が苦手なのか、どのようなときに安心できるのか。
こうした情報を保護者の方から教えていただくことは、歯科医院にとっても大きな助けになります。
そして、診断の有無にかかわらず、困っているお子さんには、その子に合った配慮が必要です。
私たちが大切にしたいのは、お子さんを無理に歯科医院に合わせるのではなく、お子さんに合った診療の方法を一緒に探していくことです。
お子さんが「歯医者さんは怖い場所」ではなく、「ここなら大丈夫」と少しずつ感じられるように。
一人ひとりの個性や特性を理解しながら、安心して通える歯科医院を目指していきたいと思います。
参考資料
- 政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」
- LITALICO「発達障害に関する解説記事」
