舌下免疫療法中の小児歯科治療について

こんにちは。小児歯科専門医の中村友昭です。

今回は、2023年5月に日本小児歯科学会から公開された「舌下免疫療法中の小児歯科治療について」をご紹介します。

舌下免疫療法とは?

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)とは、アレルギーの原因となるアレルゲンを含む治療薬を舌の下に投与し、少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく治療法です。

従来の注射によるアレルゲン免疫療法と比較して、全身的なアレルギー反応が起こりにくいことなどから、現在では広く行われています。

日本では、スギ花粉症やダニアレルギーに対して、「シダキュア®スギ花粉舌下錠」や「ミティキュア®ダニ舌下錠」などが使用されています。いずれも5歳以上が適応となっており、治療は長期間にわたって継続します。

舌下免疫療法では、口の中に症状が出ることがあります

舌下免疫療法の副作用として、口腔内のかゆみ(口腔瘙痒感)、口腔内の腫れ(口腔浮腫)、喉の刺激感、耳のかゆみなどが認められることがあります。

また、頻度は低いものの、喘息の増悪(発作)、蕁麻疹、消化器症状などがみられる場合もあります。

こうした症状は、特に舌下免疫療法を開始した初期(およそ1か月)に多いとされています。そのため、舌下免疫療法を受けているお子さんの口腔内を診察する際には、これらの症状がみられる可能性があることを知っておく必要があります。

歯科治療を行うときに注意すること

舌下免疫療法では、口腔内の状態について注意が必要な場合があります。

例えば、抜歯などの観血的処置を行った後や、口腔内に傷(開放創)がある場合、また口内炎などによって強い炎症が生じている場合です。

シダキュア®およびミティキュア®の添付文書には、重要な基本的注意事項として、

「抜歯後等口腔内の術後又は口腔内に傷や炎症等がある場合は、口腔内の状態を十分観察し、本剤投与の可否を判断すること。」

と記載されています1,2)。

このような注意は海外でも示されています3,4)。

一方で、これまでに舌下免疫療法の薬剤投与によって窒息を含む死亡例は報告されておらず、歯科治療後に重篤な症状が発症したという報告もありません5)。

舌下免疫療法中に歯科治療を受ける場合は?

以上のことから、舌下免疫療法を受けているお子さんに抜歯などの歯科治療を行う場合でも、必ずしも一律に休薬する必要はありません。

ただし、抜歯後などで口腔内に傷がある場合や、口内炎などの炎症がある場合には、薬剤の投与を続けてよいかどうかについて注意が必要です。

そのため、舌下免疫療法を受けているお子さんが抜歯などの歯科治療を受けた場合には、保護者の方から舌下免疫療法を処方しているかかりつけの先生に、歯科治療を受けたことや現在の口腔内の状態を伝え、薬剤の投与について相談していただくことをおすすめします。

歯科医院を受診する際には、お子さんが舌下免疫療法を受けていることを、歯科医師にもお伝えください。

小児歯科では、お子さんの全身状態や服薬状況なども確認しながら、安全に歯科治療を行うことが大切です。

参考文献

  1. 鳥居薬品株式会社:シダキュア スギ花粉舌下錠電子添文.
    https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/pi/cdc.pdf
    (2023年5月11日アクセス)
  2. 鳥居薬品株式会社:ミティキュア ダニ舌下錠電子添文.
    https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/pi/mtc.pdf
    (2023年5月11日アクセス)
  3. U.S. Food and Drug Administration:Allergen Extract Sublingual Tablets.
    https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/allergenics/allergen-extract-sublingual-tablets
    (Accessed April 18, 2023)
  4. Greenhawt M, Oppenheimer J, Nelson M, et al. Sublingual immunotherapy: A focused allergen immunotherapy practice parameter update. Ann Allergy Asthma Immunol. 2017 Mar;118(3):276-282.e2.
  5. 鳥居薬品株式会社:「シダキュア®スギ花粉舌下錠」および「ミティキュア®ダニ舌下錠」適正使用へのご協力のお願い.
    https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/notice/slit_2304_2.pdf
    (2023年5月11日アクセス)