こんにちは!かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。
段々、暑くなっていく季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。
本日は、侵襲性歯頸部外部吸収(ICR)について説明いたします。
侵襲性歯頸部外部吸収(ICR)とは、歯の根の表面から始まる外部吸収の一種で、歯と歯ぐきの境目である歯頸部付近に発生する病変です。初期には自覚症状がほとんどないため発見が遅れやすく、進行すると歯質が大きく失われ、歯の保存が難しくなることがあります。
ICRの原因は完全には解明されていませんが、外傷、矯正治療、歯の漂白(ウォーキングブリーチ)、歯周外科処置、歯の移植などが誘因になると考えられています。これらの刺激によって歯根表面の保護層(セメント質や前セメント質)が損傷すると、破歯細胞が歯質を吸収し始めます。また、炎症や血液供給が豊富な肉芽組織が病変内に入り込むことで、吸収がさらに進行します。
臨床所見では、初期には無症状であることが多く、定期検診のエックス線写真で偶然発見されるケースが少なくありません。病変が進行すると、歯肉付近にピンク色の変色(ピンクスポット)が見られることがあり、これは吸収部に増殖した血管豊富な肉芽組織が透けて見えるためです。また、歯肉からの出血や違和感を伴うこともありますが、歯髄は初期には保たれていることが多く、生活反応が陽性である場合もあります。
診断にはデンタルエックス線写真に加え、CBCT(コーンビームCT)が非常に有用です。CBCTでは病変の位置や大きさ、歯髄との位置関係、吸収範囲を三次元的に評価できるため、治療方針の決定に役立ちます。また、内部吸収との鑑別も重要であり、ICRは歯の外側から進行するのに対し、内部吸収は歯髄側から進行する点が異なります。
治療は病変の進行度によって異なります。比較的小さい病変では、外科的に歯肉を開いて吸収組織を除去し、欠損部をMTAセメントやバイオセラミック材料、レジンなどで修復します。歯髄に達している場合や感染が生じている場合には、根管治療(歯内療法)を併用します。一方で、吸収が歯根深部まで広範囲に及んでいる場合は、歯の保存が困難となり、抜歯が選択されることもあります。
予後は病変の大きさや発見時期に大きく左右されます。早期に発見され適切な処置が行われれば、歯を長期間保存できる可能性があります。しかし、進行した症例では再発や吸収の進行が起こることもあるため、治療後も定期的なエックス線検査やCBCTによる経過観察が重要です。
侵襲性歯頸部外部吸収は比較的まれな疾患ですが、初期には症状が乏しいため見逃されやすい病変です。歯内療法では正確な診断と病変の三次元的評価が不可欠であり、早期発見・早期治療によって歯の保存率を高めることができます。そのため、リスク因子を有する患者では定期的な画像診断と慎重な経過観察を行うことが重要です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
これから暑い日が多くなってくると思いますがご自愛ください。