Revascularizationの歴史①

みなさん、こんにちは!かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。
秋本番を迎え紅葉が美しくなる季節、いかがお過ごしでしょうか。

本日は、失活した根未完成歯に対して行われる”Revascularization”の歴史についてお話をいたします。

”Revascularization”は失活した根未完成の幼若永久歯に対して行われる治療法で、生物学的なアプローチにより歯根の成長や根管壁の厚みの増加、根尖閉鎖、線維性結合組織の形成が起こり生活反応が認められることもあります(Fig.1)。失活した根未完成歯に対する従来の治療法は、Apexificationがありますが、Apexificationではセメント質様硬組織による根尖閉鎖のみが起こり、根の成長や根管壁の厚みの増加は認められず生活反応も認められません(Fig.2)。”Revascularization”と比べて、将来的に歯根破折のリスクが高い処置と言えます。また、根未完成歯は根尖が開いているため根尖が閉鎖している根完成歯と比べて根管充填の難易度が高いと考えられます。根管充填時に充填材が根尖から逸出するリスクを考えてバイセラミックパテなど生体親和性の高いマテリアルを使う必要がある場合もあります。

Revasucularizationの術式を模式的に表すとFig.3のようになります。
根管内を洗浄し貼薬後、症状が落ち着いたところで根尖をファイルで刺激し出血を促し根管内に血餅を満たし組織の再生を図る治療法になります。

Revascularizationの治療法が確立したのは2010年頃と臨床的に見れば近代的な治療法になりますが、実は1960年代にNygaard-Østbyにより歯髄再生の概念が提唱されました。Nygaard-Østbyは抜歯窩など他の組織の治癒と同様に損傷した歯髄の治癒の第一段階は血餅形成であると仮説を立て実験を行いました。生活歯と歯髄壊死の歯に対して根管および根尖孔の拡大形成、根管貼薬を行ったあと、根尖孔外から根管内へ出血を促し、形成された血餅よりもやや歯冠側の位置までKloroperka N-O糊材とガッタパーチャポイントを用いて根管充填を行いました。その後、治療した歯は後日抜歯され組織学的評価を行うと、血管および結合組織の根管内での増殖(Fig.4-2)が生活歯で80%、失活歯で8%、根管壁にセメント質様硬組織の形成(Fig.4-1)が認められました。歯髄は線維芽細胞を豊富に伴う結合組織であるため、根管内に線維性結合組織が形成されたことは望ましいことですが、本来根管内に認められないはずのセメント芽細胞が観察されたり本来根管内に認められるべき象牙芽細胞が観察できなかったりと組織学的には歯髄再生と言えるものではありませんでした。しかしながら、Nygaard-Østbyの研究は、後に米国歯内療法学会(AAE:American Association of Endodontists)にて作られた”Revascularization”のプロトコルの元になった実験であると言えます(※1)。

ここまで読んでいただきありがとうございました。本日は”Revascularization”の歴史としてAAEプロトコルの基になった実験についてお話をいたしました。次回は、血管再生のプロセスを解明した別の実験についてお話をいたします。

<参考文献>
※1 Nygaard-Ostby.B, Hjortdal.O,Scand J Dent Res. 1971