薬剤性大腸炎について

こんにちは!歯科医師の山岸です。🦷

今回は薬剤性大腸炎について書いていきます。

 

まず、薬剤性大腸炎とは、薬剤の連用によって下痢、下血などを引き起こし、腸

管粘膜にびらんや潰瘍などの炎症症状が生じる状態です。

 

また、薬剤性腸炎を生じうる薬剤には以下のようなものがあります。

・抗菌薬

・非ステロイド系消炎鎮痛剤:NSAIDs(痛み止めの薬)

・低用量アスピリン (抗血小板薬:血液をサラサラにする)

・抗がん剤

・ランソプラゾール(胃薬)

なかでも、薬剤性大腸炎は抗菌薬によるものが最も多いです。

そして、抗菌薬により生じる薬剤性大腸炎として、偽膜性大腸炎や出血性大腸炎

があります。

これより、偽膜性大腸炎と出血性大腸炎の特徴について書いていきます。

〇偽膜性大腸炎

抗菌薬投与の数日から数週後、高齢者や腎不全患者など基礎疾患を持つ人に起こ

りやすいです。

抗生物質の使用により腸内細菌のバランスが乱れ(菌交代現象)、クロストリジウ

ム・ディフィシル(Clostridium difficile:CD)という起炎菌が異常に増殖します。

そして、CDトキシン(toxin A、toxin B)という毒素を産生し、粘膜を傷つけます。

原因抗菌薬には以下のものがあります。

・セフェム系

・リンコマイシン

・クリンダマイシン

・ニューキノロン系

症状として以下のものがあります。

・主症状は下痢(水様性)で、血便は少ないです(便の培養でCDが検出されます)。

・腹痛、発熱、代謝性アシドーシス

治療として以下のことを行います。

・原因抗菌薬の投与を中止します。

・必要に応じて、一時的に食事を止めて腸管の安静を保ち、輸液を行ないます。

・特殊な抗菌薬(メトロニダゾール、バンコマイシン)内服による治療を行なう場

 合もあります。

 

〇出血性大腸炎

抗生物質の使用から2~3日後に生じます。

10〜20代の若い人に多く、薬のアレルギーが関係しているといわれています。

原因抗菌薬には以下のものがあります。

・合成ペニシリン

起炎菌には以下のものがあります。

・Klebsiella oxytocaなど

症状として以下のものがあります。

・突然の激しい腹痛、下痢、血便が生じます。

・発熱することは少ないです。

治療として以下のことを行います。

・原因抗菌薬の投与を中止します。

・必要に応じて、一時的に食事を止めて腸管の安静を保ち、輸液を行ないます。

☆歯科治療上の注意点を挙げます。

・患者の服薬歴を把握しておきます。

・抗菌薬の長期連用を避けます。

以上、薬剤性大腸炎についてでした!

 

※皮膚の表皮の欠損をびらんといいます。

 欠損が真皮や皮下組織に及ぶものは潰瘍といいます。

※下血は、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血で、胃酸などによって血液

 が黒く変色し、タール便として排出されます。

 一方、大腸や肛門に近い下部消化管からの出血は血便といい、鮮血が混じった

 便として排出されるのが特徴です。