こんにちは。歯科医師の高橋(克)です。
本日は義歯の精密印象についてです。
精密印象とは、義歯の診査及び設計用の模型を用いて個人用の型(トレー)を製作し、それを使用して精密な型とりをおこなう作業のことです。
精密印象に使用するものとしては、型取り材としてアルジネートやシリコンが主なもので、その他にモデリングコンパウンドなどを使用する概形印象とよばれる口腔内の可動領域を印字する作業も必要になってくることもあります。
例えば、全部床義歯でほとんど顎堤(顎の骨)がない場合など、通常の型とりでは不十分な要素があるときに、口腔の様々な運動時の可動範囲をあらかじめトレーに印字し、そのあとで印象材をトレーに付けて型とりをすることで、口を動かした時の粘膜や筋肉等の動きが再現され、外れにくくかつ痛みが生じにくい義歯が仕上がると言われています。
概形印象の主な材料としてあげられるモデリングコンパウンドの使い方ですが、アルコールランプや、トーチなどを使用し、材料を熱して軟化させて個人トレーの辺縁に付着させて、それを患者さんの口腔内に入れた状態で必要な動作をしていただいたり唇や頬を動かしたりして、部分的に少しずつ成形したトレーを全体的に機能的な外形になるように仕上げていきます。
モデリングコンパウンドをトレーに付ける位置ですが、まず上顎であれば臼歯部歯肉頬移行部から、後縁にかけて義歯の維持安定にかかわる付近と、口蓋咽頭アーラインの発声や咽頭反射がかかわる付近までと、上唇小帯や頬小帯や筋肉の可動範囲などを口を運動させながら印字していきます。
下顎義歯であれば、同じく頬小帯や舌小帯や咀嚼筋などの可動領域や頬粘膜の可動領域、それと義歯の維持安定に関与する遠心舌側から顎舌骨筋窩付近や、舌の運動領域、及び義歯の沈み込みなどを防ぐレトロモラーパッドなどを覆う範囲などを印字していきます。
大体の形が出来上がったら、トレーに印象材をのせて患者さんに口腔内の機能運動等をしていただきながら印象材を硬化させていきます。これが型とり二回目の精密印象となります。
精密印象は、総入れ歯の場合におこなう機会が多いですが、時折自費診療の義歯の場合や部分床の難症例などの場合などにすることもあったりします。個人トレーで型とりするときは、アルジネートやシリコンの印象材の厚みが薄くなるため、硬化して口腔内から剥がすときに、注意しないとトレーから印象材も剥がれてきやすいので、場合によっては何回か型とりしないといけないこともあります。