口と歯の気になる症状(続編)

こんにちは。歯科医師の高橋(克)です。
本日も前回と同様に補綴物が適合不良で再製作になる原因について考えていきたいと思います。
考えられる原因
支台歯形成の状態
その1 切削時のアンダーカット
切削時のアンダーカットとは、完成した補綴物を取り外しながら、調整と接着を行うには、通常歯の周囲の並行性を見ながら歯を削っていく必要があるのですが、切削後に並行性が確保できず、引っ掛かりができてしまっているような状態のことをいいます。一見口腔内では、並行性や仕上がりの形に問題なさそうであっても、模型にすると、細部の見えなかった部分が判明することは多々あります。特に顎関節症等で顎の開口量が少ない方だったり、嘔吐反射が激しい方だったり、歯科に対して恐怖心が強いお子さんだったり、ご高齢でユニットが充分倒せない方だったり、普段から食事中にむせやすい方だったりすると、形成時(歯を切削するとき)の視野でのアンダーカットの確認が難しいこともあるので、発生しやすい傾向があるようです。治療箇所としては、最後臼歯の遠心面(一番奥の面)や、歯肉辺縁部(歯と歯肉の境目の部分)など、視野で確認しにくい部分に好発しやすいと思われます。
その2 咬合面のクリアランス不足
咬合面とは、上下の歯が噛みあう歯の面のことで、そこが歯の切削後に充分な厚み(クリアランス)がないと、補綴物の保持や強度が確保されず、せっかく入った補綴物に穴があいたり、それに伴う脱離と破折及びう蝕の再感染に繋がることなどもありえます。なのでクリアランスが足りない時はもう少し噛む面を切削して再製作となるわけですが、これが起こりやすい歯は、もともと小さい歯、例えば乳歯であったり、永久歯であっても乳歯のように小さい歯だったり、噛み合わせがもともと低い歯だったり、従来の噛み合わせから低くなってしまった人、例えばブラキシズムがあったり、歯の欠損を長年放置してしまった人や、義歯を製作したが長年使用していなかった人、あとは生活歯(神経の治療をしていない歯)などです。なぜ生活歯がクリアランス不足になりやすいかと言うと、歯を切削すると歯の中の神経(歯髄)に多少の炎症反応を起こすので、歯科医師はなるべく生活歯は刺激しないように形を整えるのに細心の注意をはらうからです。個人差によりますが、治療後の一時的な炎症は、時折改善できずに歯の神経を取らざるを得ないこともあるのです。
神経を取った歯(失活歯)はしっかり削れますが、神経が残っている歯(生活歯)は刺激が出にくい範囲でしか切削できないのです。あらがじめ炎症が起きそうであれば、初めから神経を取る医師もいますが、そこはいろいろなケースがあると思いますので、形成前に神経を取る治療をされるさいには、充分主治医の先生とご相談されることをお勧めいたします。