口と歯の気になる症状(続編)

こんにちは。歯科医師の高橋(克)です。

本日も前回の続きで、補綴物が適合不良で再製作となる原因について考えていきたいと思います。

考えられる原因

温度変化による歯科材料(今回は歯科用ワックス)が受ける影響について

暑い日が続いています。歯科技工作業中には、ワックスをはじめ様々な技工材料が、温度変化などにより変形する(膨張収縮などによって歪みを生じる)ことで、補綴物の仕上がりに顕著に影響を及ぼすと言われています。

例えば石膏模型からワックスで金属の冠の原型を形成するときは、分割されて取り外ししながら技工作業ができるようになった石膏模型上に、ワックスが接着しないように分離材を塗布し、その上から熱したワックスを少しずつ盛り足しながら、余剰部は技工用ナイフで削ったりしながら、仕上げに布等で磨き最終的な形態にします。そのことをワックスアップと言って、その形がそのまま金属の形になっていくので、それがとても重要な作業となります。

技工室の室内温度が高ければ高いほど、当然ワックスが室内にこもった熱により、部分的に溶けて最終的な補綴物に歪みが生じることになります。歯科材料の性質で考えると、ワックスの場合温められると膨張して柔らかくなり、冷やされると収縮して固くなるので、室内はエアコンを使用しているとはいえ、夏場はかなり技工作業に神経を使う要素が増えるようです。

そうでなくとも、金属を鋳造する時に、蝋を溶かす炉や金属を溶かすためのバーナー等を使用しなくてはいけないので、その周辺で作業をしなくてはならない時などは、室温が上がることは避けられない状況になることも時にはあるようです。

ワックスの歪みが生じるタイミングとして一番頻度が高いと考えられることは、模型からワックスアップ済みの型を取り外す時と、埋没材を流す前に鋳造リングを植立する時だと思われます。難易度が高い作業ですし、さらに埋没材をリングに流す作業の前も、振動を与えながらワックスアップされた型をスプルー線等で植立された台の周囲に埋没材を気泡が付かないいように流す作業があり、室内温度が上昇している環境下では、どこかでワックスの歪みが生じてもおかしくないくらいの状況だと思われます。

その他に歯科用ワックスの用途としては、義歯の高さ決めや、義歯の仮あわせなど数えきれないほどの用途があり、実際のところ、保険診療をメインとしている歯科医院においては、ワックスを使用しない日など皆無に近いくらいなので、今後も歯科治療や技工物保存環境の管理には、十分注意をはらっていく必要がありそうです。