口と歯の気になる症状(続編)

こんにちは歯科医師の高橋(克)です。

本日は歯原性の良性腫瘍Ameloblastomaエナメル上皮腫についてです。

定義:歯原性上皮性腫瘍で、実質が歯胚の上皮成分(エナメル器)または歯堤に類似し、しばし ば大小の囊胞を形成するのを特徴とする。腫瘍の発生母組織として、Malassezの上皮遺残、 顎骨内に散在する退化歯原上皮、歯原性囊胞の囊胞壁上皮、埋伏歯に関連する歯原上皮など があげられる。

好発部位:下顎臼歯部〜下顎角部(特に智歯部)。

好発年齡:20-30歳代。

性差:男性にやや多い。

臨床症状:一般に発育はゆるやかで、経過は長い。初期には無症状だ が、増大するに従い、骨や頰部の膨隆をきたすようになる。顎骨の膨隆した部分では皮質骨が菲 薄化し、ときに波動を触れることもある。また、歯の転位や咬合障害をきたすこともある。

X線像: 顎骨内に多房性ないし単房性、ときに石けんの泡状ないし蜂巣状を呈する透過性病変、 境界は明瞭、膨隆性で骨皮質を菲薄化、隣在歯を転位、接した歯根を吸収する。鑑別として含 歯性囊胞

組織像:歯胚の上皮成分(エナメル器)または歯堤に類似した実質と線維性結合組織の間質と からなり、その組織型から濾胞型と叢状型とに大別される。濾胞型は、実質が種々の 大きさの独立した腫瘍胞巣からなり、腫瘍胞巣内にしばしば囊胞形成をみる(実質囊胞)。叢状 型は、実質が網目状あるいは索状を呈し、間質にはしばしば変性によって囊胞が形成 される(間質囊胞)濾胞型と叢状型が混在している場台も少なくない。

濾胞型と叢状型につぎの ような亜型が存在する:棘細胞腫型・顆粒細胞型・基底細胞型。

治療:腫瘍の拡がリ、組織型、囊胞の状態などを総合して、開窓、摘出あるいは顎骨の区域切除 をおこなう。

周辺性エナメル上皮腫:顎骨周囲の歯肉に生ずるエナメル上皮腫で,臨床的に歯肉部に境 界明瞭な腫瘤状の膨隆をみる。

(以上口腔疾患診断プラクティス編著山本浩嗣より)

エナメル上皮腫は、顎骨内にできる代表的な良性腫瘍のひとつと言われています。私自身が診察した患者さんではあまり拝見したことはなかったのですが、もし かしたら、根尖のあたりに透過像として何件か可能性としては、あったことがあるかもしれませ ん。パノラマ内で小さい像として写ると、見逃しがちな腫瘍(良性)ですので、今後も気をつけなが ら診断をおこなっていければと思っております。