歯科と糖尿病 その3

みなさん、こんにちは。歯科医師の伊勢円です。

前回、前々回と糖尿病について様々な研究をみていきました。そして、糖尿病予備軍とわずかな血糖上昇の恐ろしさを知ることができました。

今回は糖尿病についての最終回です。

まず最初に、妊産婦の糖代謝異常についてです。

9カ国15施設の25505人の妊婦を対象にした試験で、血糖値と①在胎週数に対する出生体重が90パーセンタイルを超える頻度②初回帝王切開の頻度③新生児低血糖の頻度④臍帯血血清Cペプチドが90パーセンタイルを超える頻度との関連が調査されました。この試験においても、ごくわずかな血糖上昇が、統計学的に有意な周産期合併症の増加に繋がることがわかりました。

日本において妊娠糖尿病は決して珍しいものではありません。日本の妊産婦の6.2%はなんらかの糖代謝異常があり、妊娠糖尿病経験者の1割が出産後に糖尿病を発症する危険性があることが報告されています。

さらに、インドでは歯周病と妊娠糖尿病について研究されました。初回妊婦584人を対象に歯周検査と75gブドウ糖負荷試験を実施したところ、9.8%の妊婦が妊娠糖尿病と診断され、また56.8%の妊婦が歯周病を合併していることがわかりました。妊娠糖尿病罹患者のうち歯周病を認めなかったのは4.4%、歯肉炎は9.2%、歯周炎は19.6%で、妊娠糖尿病罹患率は歯周病合併者で有意に上昇しました。このことから、妊婦に対して歯周病の管理を徹底することで妊娠糖尿病の発症を予防できる可能性があると言えます。

早期糖代謝異常の人にどのように介入していくか、これまでのお話で歯科も重要であることがお分かり頂けたと思います。

医科歯科連携について興味深い調査があります。

病院の歯科口腔外科、消化器外科、心臓血管外科、小児科、血液内科の手術症例、放射線治療症例、化学療法症例に対して一般的な口腔ケア(看護師による口内清拭などのケア)と専門的な口腔管理(歯科医師や歯科衛生士による専門的口腔機能管理)を行った場合、在来日数にどんな違いが出るのかという調査では、全科において専門的な口腔管理を行ったほうが一般的な口腔ケアを行った場合に比べて在来日数は有意に短縮するということがわかりました。

また、中核病院にて歯科医師による病棟での検診、処置や看護師、リハビリテーションスタッフへの教育を徹底したところ、がん周術期患者の術後肺炎併発はわずか0.4%(開始前は12.3%)と大幅に減少しました。

医科歯科連携に関しては、糖尿病患者に対してもとても意義のあることと言えます。糖尿病患者の歯周治療を行う時、歯科から医師へ検査値や処方内容を照会して診療情報を連携することで全身の変化を把握することができるのです。

以上、糖尿病についてでした。