噛み合わせの話

みなさん、こんにちは。歯科医師、関です。10月も終わりを迎えようとしていて、だんだんと寒くなってきましたね。

さて、今回も『咬合』についてやっていきます。
 
理想とする顎の位置と咬み合わせの要件は以下の9つありました。
①顎関節において関節窩・関節円板・顆頭の位置関係と形態が正常である
②安定した咬頭嵌合位である
③バランスの取れた適切な咬合平面である
④適切なスピーの湾曲、ウィルソンの湾曲がある
⑤歯列形態が左右対称のU字形で連続性がある
⑥舌房が許容されるために十分な咬合高径である
⑦顆路角と連動するような咬頭傾斜角と展開角をもった咬合面形態である
⑧左右側方運動において同じような咬合様式をとる
⑨自由度のある前方・側方の誘導要素

前回は、④のウィルソンの湾曲について、と⑤歯列形態が左右対称のU字形で連続性があるについてご説明しました。
今回は、⑥から続きをお伝えしようと思います。

⑥舌房が許容されるために十分な咬合高径である
舌房とは、舌が機能を営むのに必要な空隙のことです。舌房の広さは、舌の大きさや歯列弓形態によって決まりますが、咬合時には咬合高径も関与します。舌房が狭いと舌は後方に押しやられ気道を圧迫し、慢性的な酸素不足を来しやすいと言われています。
咬合高径とは、上下の歯をカチンと噛み合わせたときの上顎と下顎の距離です。噛み合わせた状態で、鼻の下から顎の下までの距離を測ります。
咬合高径が低い(距離が短い)と舌房が狭くなるのに加え、頬や舌を噛みやすくなったり、口周りのしわが深く、顎が前突した老人様顔貌になります。逆に咬合高径が高すぎると、咀嚼筋に負荷がかかりすぎ顎の疲労感を感じたり、唇が閉じづらくなります。

⑦顆路角と連動するような咬頭傾斜角と展開角をもった咬合面形態である
顆路とは、顎を左右前後に動かしたときに、顎関節にある下顎頭が示す運動経路のことであり、顆路角とは、基準面に対して顆路がなす角度です。顆路角には理想的な角度があり、顎の動きを評価するときに用いられます。
奥歯の咬む面には咀嚼のための凸凹があり、この凸凹の角度を評価するのが、咬頭傾斜角と咬頭展開角です。咬頭傾斜角とは、歯軸に対して垂直な線と咬頭斜面のなす角であり、咬頭展開角とは、頬側の咬頭斜面と舌側の咬頭斜面のなす角です。咬頭の隆起が急だと咬頭傾斜角は大きく、咬頭展開角は小さくなり、隆起が弱いと咬頭傾斜角は小さく、咬頭展開角は大きくなります。
顎の関節の動きと、歯の凸凹の形が連動し、調和する状態だと、効率的に咀嚼運動ができます。咬頭の隆起が顆路角に対して、急すぎると、顎の動きを制限し顎関節に不調を来します。逆に隆起が緩すぎると、顎の動きの制限がなさすぎて咬む動きが安定しにくいです。

以上、⑥舌房が許容されるために十分な咬合高径である
⑦顆路角と連動するような咬頭傾斜角と展開角をもった咬合面形態である、についてでした。

次回も続きをお伝えしたいと思います。