骨粗しょう症の薬を飲んでいる方の歯科治療

こんにちは。歯科医師、高橋千佳です。皆様お元気でお過ごしでしょうか?コロナも一段落してきて、そろそろ”歯医者さんにいかなくちゃ”などと考えはじめていらっしゃる方も多いのではないかと思います。そこで今回は、骨粗しょう症の薬を飲んでいる方の歯科治療(特に外科処置の注意点)について書きたいと思います。

 

ビスフォスフォネート製剤による顎骨壊死について

ビスフォフォネート製剤(以下BP剤)は骨吸収を抑制する薬剤で、正確な働きは不明ですが、骨に沈着し破骨細胞(骨を溶かす細胞)の働きを抑えることで骨吸収を抑制するといわれています。
そのため、骨粗しょう症、関節リウマチ、パジェット病のような骨代謝疾患、そして悪性腫瘍など多くの疾患に使用されています。
骨に転移する性格を持つ乳癌や前立腺癌、骨髄腫において骨破壊による痛みの緩和や、高カルシウム血症の制御に特に効果的です。
また膠原病などでステロイド剤を長く内服している方は薬の副作用で骨そしょう症になりやすいため、予防としてBP剤が一緒に処方されることも多くなっています。
このようにBP剤は癌や骨そしょう症においては大変有効な薬ですが、近年BP剤に関連したと考えられる顎骨壊死(ビスフォフォネート性顎骨壊死)の報告が多数みられるようになりました。

これはBP剤を内服中の方が抜歯などの外科処置を受けた後に骨の露出したまま治らなかったり、歯周炎等の感染が拡がり骨の露出や排膿が続き上顎骨や下顎骨が壊死状態になるもので、非常に治療が困難です。

BP剤を長期にわたって内服している人や、高齢者、ステロイドの内服をしている人、糖尿病の人、喫煙者などはビスフォフォネート性顎骨壊死の可能性が高まります。
その発生を防ぐ最善の方法は、口腔衛生状態を保つために適切な歯みがきを行い定期的な歯科検診を受けること、歯科受診時はBP剤 を投与されていることを伝えることです。

また、骨そしょう症や関節リウマチなどでこれからBP剤の内服や注射が予定されている場合は、
抜歯などの外科的な歯科処置は可能な限りBP剤による治療開始前に完了しておくことが大切です。
すでにBP剤の内服や注射を受けている方は、その治療期間によっては抜歯前に3~6ヶ月BP剤を休薬する必要があります。

BP剤を使用している方の歯科治療に際しては、歯科医師と内科や整形外科などBP剤を処方している医師との間で打ち合わせが必要ですので、患者さんご自身での判断せず、必ず担当の歯科医師にBP剤を内服(あるいは注射)している旨お申し出ください。

日本で使用されているBP剤

注射剤 : アレディア、オンクラスト、テイロック、ビスフォナール
経口製剤 : ゾメタ、ダイドロネル、フォサマック、ボナロン、アクトネル、ベネット

ビスフォスフォネート系薬剤の内服中もしくは服用経験のある方の抜歯をする際の対応法

BP剤を使用している方の歯科治療に際しては、歯科医師と内科や整形外科などBP剤を処方している医師との間で打ち合わせが必要ですので、患者さんご自身での判断せず、必ず担当の歯科医師にBP剤を内服(あるいは注射)している旨お申し出ください。

 BRONJは治療がたいへん困難なため、予防が第一です。
BP剤の内服を開始する前に歯科検診や必要な処置をうけましょう。
顎骨壊死の予防のために、BPの内服中もしくは服用経験のある方に対しては処方されている先生と連携して、以下の方針で歯科治療および手術を行い顎骨壊死の予防に努めます。

1. 歯石除去・虫歯治療・義歯作成など顎骨に侵襲がおよばない一般の歯科治療 顎骨や歯肉への侵襲を極力避けるよう注意して歯科治療を行ない、定期的に口腔内診査を行ないます。
2. 抜歯・歯科インプラント・歯周外科など顎骨に侵襲がおよぶ治療
 1) 内服期間が3年未満でステロイド薬を併用している場合、あるいは内服期間が3年以上の 場合は、BP内服中止可能であれば手術前少なくとも3か月間はBPの内服を中止し、手術後も骨の治癒傾向を認めるまではBPは休薬していただきます。
 2) 顎骨壊死の危険因子(糖尿病、喫煙、飲酒、癌化学療法など)を有する方もBP内服が中止可能であれば手術前少なくとも3か月間はBPの内服を中止し、手術後も骨の治癒傾向を認めるまではBPは休薬していただきます。
 3) BP内服期間が3年未満で危険因子のない方に対しては、通常のごとく口腔外科手術を行ないます。

なお、BPの休薬・再開などについては、担当(処方)医師と充分相談の上決定し顎骨壊死の発生予防に努めますが、上記の処置方針に従ったとしても顎骨壊死が生じる危険性があります。

以上のことを踏まえ、骨粗しょう症の薬を飲まれている方は十分に留意して頂いた上で歯科治療に臨んで頂ければ幸いです。