歯ぐき及びお口の中の出血

今年1月から本院で治療させて頂いている高橋千佳と申します。今回はお口の中の出血、特に歯茎の出血について書いてみたいと思います。まずは、よく医療の現場で使われる「出血傾向」とは何かといいますと、止血機構に何等かの異常があり、止血しにくい状態をいいます。つまり、止血機構に関わる血小板、血管、凝固系、線溶系のいずれかに異常があるとおこります。一般的には、歯ぐきからの出血といわれるものの多くは、歯磨きがうまくできなかったために歯肉炎や歯周病になってしまったことによるものが多いと思われます。しかし、まれに出血素因による出血も見られることがあります。

私が過去に診た患者様では、来院される前日から“急に歯ぐきからの出血があり、大きな血豆ができた。また、鼻出血もあった。”というものでした。お口の中を拝見させていただくと、4×4cmほどのいわゆる血腫ができていました。すぐに市民病院に紹介しました。すると、翌日奥様がお返事を持ってこられました。即入院になったそうで、も少し遅れたら手遅れになっていたかもしれない、といわれたそうで、たいそう感謝されました。その方の病名は「急性血小板減少性紫斑病」でした。いまでもその時のことは鮮明におぼえています。

という経験を踏まえ、歯科でみられる頻度の高い代表的な疾患をしるしていきたいと思います。

①血小板減少性紫斑病:原因不明な血小板の減少を示す疾患で、急性型は幼児に起こることも多く、慢性型は20~40歳の女性に多い。皮膚の紫斑、鼻出血、歯肉出血などの浅部出血が主。

②再生不良性貧血:骨髄造血細胞の低形成により末梢血の汎血球減少(赤血球、白血球、血小板の明らかな減少)のためおこる全身倦怠、発熱などの貧血症状のほか、易感染性がみられる。

③白血病:血液の悪性腫瘍であり、白血病細胞が腫瘍性に増殖するもので、汎血球減少が起こる疾患である歯肉出血、歯肉の腫れ、口臭がみられる。。

④血友病:先天的に血液凝固第Ⅷ因子または第Ⅳ因子の活性が低下している疾患。前者が血友病A、後者を血友病Bという。血友病は自然に出血するのではなく、血液が固まりにくい疾患である。微小な出血でもにじむような出血が続き、止血困難となる。

以上のような疾患もあるため、たかが出血と侮らず、異常を感じたときはすぐに医療機関に相談されることをお勧めします。また同時に我々歯科医師も日々注意深くお口の中を見させていただくことを大事にしたいと思います。