インプラントのために骨を増やす?!

みなさん、こんにちは。歯科医師、関です。

4月ももうすぐ終わりを迎え、いかがお過ごしでしょうか? もうすぐ平成が終わり、新しい元号の令和になりますね。令和には「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味が込められているらしいですね。いい言葉ですね。是非そうあってほしいものです。

 

さて、今回の豆知識のテーマは、インプラントにおける骨造成です。

インプラントというのは、顎の骨の中に埋め込まれて安定していなければなりません。そして、歯の代わりとして咬む力に耐えうる強度が必要となります。

そのため、インプラント自体に一定以上の太さと長さが必要となります。一定以上の大きさのインプラントを埋め込むための骨がなければ、インプラント治療は行えません。

一般に、歯がなくなってしまった部分の顎の骨というのは時間経過とともに少なくなってしまいますし、元々歯があったときに、歯周病や歯の破折による感染があった場合、その時点で骨は吸収しています。

 

そこで、インプラントを埋め込むために骨が足りない場合に、骨の高さ、厚み、幅を増やす治療である骨造成を行います。

 

骨造成をする必要があるか、ないかは術前のCTレントゲンから得られる骨量と埋入したいインプラント体からシュミレーションし、判断します。治療の難度や期間もどのくらいの量の骨造成が必要か、どのような手技の骨造成が必要かによって変わってきます。

 

骨造成は、骨補填材といわれる材料を骨の不足部分に盛り足すことで行います。骨補填材が骨の代わりになるというよりも、そこに骨ができるのを手助けするイメージです。骨補填材を入れることで、骨ができるスペースを確保したり、骨ができるように誘導したりします。使われる骨補填材にはいくつか種類があります。

 

①自家骨

患者さん自身から採取した骨を移植する方法。口腔内では下顎枝やオトガイ部、口腔外では腸骨や肋骨などから採取します。補填材料の性質としては、最も確実性が高いですが、侵襲が大きく患者さんの負担が大きいです。

 

②他家骨

⑴同種他家骨

ヒトのドナーから供給された骨を脱灰や冷凍乾燥処置したもの。国内で承認された商品はありません。

⑵同種異種骨

ウシなどの動物由来の骨を焼成した無機物。骨伝導能があり、少し吸収性があります。

 

③人工材料

⑴ハイドロキシアパタイト

ヒトの歯や骨の主成分であるリン酸カルシウム。骨伝導能があるが、吸収しないため骨に置換せず残ります。

⑵β-TCP

リン酸カルシウムの一種。骨伝導能があり吸収性を有すため、骨に置換します。機械的強度が弱く、広範囲の補填には適しません。

⑶生体活性ガラス

 

以上が大まかな骨補填材の分類です。実際の治療では複数の補填材を症例によって組み合わせて使用することも多くあります。

 

骨造成をするタイミングとしては、インプラントの埋入手術をする前にあらかじめ骨補填を行い、十分量の骨を確保してから2回目の手術でインプラントを埋入する方法と、インプラントの埋入手術と同時に骨補填材を骨の不足部分に入れる方法があります。

また、抜歯後の穴に補填材を入れて抜歯による骨吸収をできるだけ減少させる治療もあります。

 

インプラントとは骨の中に埋入して機能するものであるため、骨との関わりはとても重要です。骨造成は非常に有効な治療法ですが、用いる補填材と手技の選択は熟慮する必要があるでしょう。