歯周病とアルツハイマー型認知症

こんにちは、歯科衛生士、和田です。

「長寿社会でありながら健康寿命が短い」という現状は、日本の医療福祉の課題の中でも気になることの1つです。
せっかく長生きしても、晩年はずっと寝たきりだった、認知症だった…となると、ご本人もご家族もやるせないですよね。

実は、歯周病がアルツハイマー型認知症の悪化に関わっている、という研究結果があります。
それによると歯周病菌の毒素がアルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβを増やして、症状が悪化するらしいのです。
アミロイドβはタンパク質の一種で、正常でないものが蓄積すると脳細胞を破壊すると言われています。

実験では、歯周病を発症させたマウスと発症していないマウスを3か月飼育し、それぞれの脳内に生じるアミロイドβの蓄積を測量した他、学習行動試験により認知機能の評価も行ったそうです。

結果は歯周病のマウスでは、歯周病でないマウスに比べて脳内のアミロイドβが約1.4倍に増え、炎症物質サイトカインの上昇が確認されたというものでした。
また歯周病のマウスでは、記憶学習能力の低下も見られたそうです。

歯周病のマウスの脳内では、歯周病菌から出ている毒素や、免疫細胞が細菌を攻撃するために出すサイトカインが増殖したため、アミロイドβが作られる量が増えたと考えられます。
アミロイドβは通常の脳にも存在しますが、分解されずに毒性の強いものが蓄積されると、神経細胞を破壊し脳の萎縮を引き起こす、というのがアルツハイマー発症の一般的な仮説です。
なので、これに基づけば歯周病の予防や治療で、アルツハイマー型認知症の発症や進行の抑制につながる可能性があるということになります。

そもそも、まだアルツハイマー型認知症についてや発症のメカニズムは研究段階のことが多いようですが、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病、高血圧…様々な全身疾患が歯周病と関わりが深いことを考えると、繋がりがあっても不思議ではないですよね。

それに脳内の変化だけでなく、よく噛めなければ顎から脳への刺激が減少する、身体のバランスが崩れる、食事という人生の楽しみが限られるなど、他の原因も増えると言えるでしょう。

歯周病は30代の日本人の8割が罹っている病気ですが、そこから悪化させるか安定させるかは、毎日の習慣と定期的なケア次第です。
忙しい時や疲れている時に「歯磨き面倒だなぁ…」「定期検診がちょっと億劫…」と思ったら、ちょっとだけ全身の健康との繋がりを思い出して頂けると幸いです。