インプラントができない?! パート2

みなさんこんにちは。歯科医師、関です。 新年、2019年を迎えて早一月が経とうとしています。いかがお過ごしでしょうか?

1月2月は気温、湿度が低く、最もインフルエンザにかかりやすい時期ですね。インフルエンザの予防法として手洗い・うがいや人込みを避けるなどの予防法は広く知られていますが、実はしっかり歯を磨くこともインフルエンザの予防として非常に有効らしいですよ。それだけお口の健康は大事ってことですね。

 

さて、今回も前回に引き続き『インプラントの危険因子と制限』についてお伝えしたいと思います。 前回は、年齢・喫煙・金属アレルギー・妊娠におけるインプラントの注意点を挙げました。 今回はインプラントで注意が必要な全身疾患について述べていこうと思います。

(1)糖尿病

糖尿病とは血糖値を下げるホルモンであるインスリンがうまく産生されない、またはうまく受容されないことにより高血糖になってしまう代謝性疾患です。 高血糖による微小血管障害により様々な臓器障害が起きるとともに、細菌感染に対する抵抗力が低下します。 細菌感染に対する抵抗力が低下し、創傷治癒が悪いため、血糖値がコントロールされていない糖尿病の方はインプラントができません。 食生活習慣の改善と内服薬により治療を行い、血糖値コントロールの指標であるHbA₁c(JSD)の値が7.0未満でなければインプラントは不可とされています。

(2)高血圧

高血圧とは、収縮期血圧140以上または拡張期血圧90以上の状態をいいます。血圧は興奮や緊張状態になると上昇するため、緊張を伴い手術侵襲のあるインプラント手術において注意をする必要があります。 高血圧はその血圧分類(Ⅰ度:140-159/90-99、Ⅱ度:160-179/100-109、Ⅲ度:180-/110-)とその他のリスク因子(第一層:危険因子なし、第二層:糖尿病以外の1~2個の危険因子、メタボリックシンドローム、第三層:糖尿病、CKD、臓器障害、心血管病の3個以上の危険因子)から低リスク群、中等リスク群、高リスク群の3段階に分けられます。 高リスク群は単純な1~2本の埋入まで、中等リスク群は数本の埋入までとされています。

(3)抗血栓薬服用

抗血栓薬とは、心疾患、脳血管疾患、血液疾患などの治療で服用するアスピリン、ワーファリン、ダビガトラン、エドキサバンなどの血液がサラサラになる薬のことです。 インプラント手術では出血が伴うため、血が止まりにくい上記の薬を服用している場合リスクがあります。 止血時間の指標であるPT-INRが2.5以下で単純な1~2本の埋入まで、1.5以下で複数本の埋入まで可とされています。

(4)骨吸収抑制剤服用

悪性腫瘍や骨粗鬆症の治療で使用されるビスフォスフォネート(BP)製剤、デノスマブなどの骨吸収抑制剤にはMRONJ(薬剤関連性顎骨壊死)を起こすリスクがあります。 MRONJとは、上記の薬を使用中または過去に使用していた患者が、抜歯やインプラントなどの顎骨への侵襲なある治療や虫歯や歯周病などの放置により顎骨が感染し壊死に陥る病気です。骨吸収抑制の作用により骨の感染抵抗性が低下し、顎骨壊死を招いてしまいます。 悪性腫瘍治療中の場合はもちろんインプラントは不可です。 骨粗鬆症で使用した場合は、4年以上の使用または4年未満でもステロイド併用ならインプラント手術前後2か月は休薬しなければなりません。もしも休薬できないならばインプラントは不可です。

以上に挙げた全身疾患以外にもステロイド治療や免疫抑制剤治療をされている場合など他にもインプラントのリスク、制限はあります。 インプラントをしたいけれども全身の病気が心配な方は、病気の主治医と歯科医師に相談してみて下さい。