みなさん、こんにちは!かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷光晴です。
すっかり秋も深まり、朝晩の冷え込みに冬の足音を感じる季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
本日は、歯の根っこが未完成の永久歯(根未完成の幼若永久歯)の治療法である”Revascularization”の成功と失敗について考えてみたいと思います。
”Revascularization”は、一度、神経が死んでしまった(歯髄壊死)根未完成の幼若永久歯の神経のお部屋を洗浄することによって、神経と似たような組織が新たに出来て、神経のお部屋の中に満たされ、未完成であった歯を成長させることができる治療法です。
米国歯内療法学会(AAE:American Association of Endodontists)の用語集(※1)
では、”Revascularization”は”Regenerative Endodontics”という名称で用いられ、「象牙質および歯根を含む損傷した歯質構造ならびに歯髄象牙質複合体の細胞を生理学的に置換することを目的とした生物学的な処置法である。」と定義されています。また、AAEのポジションステートメント(※2)では、「”Regenerative Endodontics”は、根尖閉鎖、根の伸長および肥厚の促進など、以前は見られなかった結果をもたらす。さらに冷刺激や電気歯髄診に対して陽性を示した症例もある。これらの結果は、根未完成歯の予後を改善し、第一選択の治療として考慮されるべきである。」と記載があります。
歯髄壊死を起こした根未完成歯の治療には、従来、アペキシフィケーションが用いられていましたが、この方法では根尖閉鎖は期待できますが、歯根長の増加や歯根壁の厚み、冷温診や電気歯髄診に対しての陽性反応は期待できません。現在、”Revascularization”に関する多くの臨床試験やコホート研究が発表され、アペキシフィケーションと同等の良好な成功率が得られることが確認されています。
図.1 Revascularizationの成功率に関するメタアナリシス
2017年にTrabinejadらによって発表されたMTAを用いたアペキシフィケーションと”Rvascularization”の成功率に関するメタアナリシス(※3、図.1)では、どちらも90%以上の成功率であり有意差は認められませんでした。
しかしながら、深いう蝕や重度の外傷などの因子は、治療の成功率を低下させることが明らかになっています。
図.2 Revascularizationのリスクファクター評価に関する後ろ向き研究
2020年にChrepaらによって発表された”Revascularization”のリスクファクター評価に関する後ろ向き研究(※4、図.2)では、う蝕が原因の歯髄壊死は成功率が低いことが分かっています。つまり、う蝕はRevascularizationの成功に対するリスクファクターであると言えます。
図.3 Revascularizationの失敗症例に関するシステマティックレビュー
2019年にAlmutairiらによって報告されたRevascularizaionの失敗症例に関するシステマティックレビュー(※5、図3)では、失敗の原因の79%は持続感染によるものと示されています。
図.4 Revascularizationの治療成績の考察
また、2017年にLinらによって報告されたRevascularizationの治療成績をRCTランダム化比較試験にて考察した論文(※6、図4)では、中心結節破折は成功率が97.9%であったのに対して脱臼性外傷は71.4%と低い結果となりました。脱臼性外傷により根尖歯乳頭組織が破壊されたことが原因であると考えられます。歯乳頭には、強い増殖能があり、未分化間葉系幹細胞が密集し根尖と近接しており、Revascularizationにおいて幹細胞の供給源として利用されると考えられています。したがって、脱臼性外傷により歯乳頭が損傷されると治癒に影響する場合があると結論づけられます。
”Revascularization”は全ての症例に対して有効な治療法ではなく、適応症を慎重に見極める必要があると考えられます。しかしながら、根未完成の幼若永久歯にとって歯根の成長が期待できるという非常に大きなメリットがあることから、第一選択となり得る治療法であるとも言えます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
根管治療についてお悩みの方はどうぞお気軽にご相談ください。
<参考文献>
※1 AAE Glossary of Endodontic Terms, 2020
※2 AAE Position Statement – Scope of Endodontics: Regenerative Endodontics, 2025
※3 Torabinejad M et al, J Endod. 2017
※4 Chroma V, Joon R. J Endod. 2020
※5 Almutairi W, Yassen GH. J Endodo. 2019
※6 Lin J, Zeng Q. J Endod. 2017



