こんにちは。歯科医師の高橋(克)です。
本日の内容は、加齢による口腔内の変化についてです。
①口腔内細菌の変化
人は生まれてきたときから、自分以外から由来する口腔内の感染が始まるようになります。それは家族間のスキンシップであったり、交流のある人物からのものであったり、口腔内から摂取する食べ物であったり、あるいはペット由来のものであったり、外で接触する全てのものから、口腔内の細菌は影響を受けています。
例えば、歯周病やむし歯の原因菌といわれているものが、ペットボトルの回し飲みや他人の飲み物の飲み残しを飲んだりしたことなどで、口腔内で菌が増殖し、感染してしまうといったことは、誰かしらから聞いたことがあるのではないでしょうか。
特に成長期から青年期にかけて、そのような機会が多かった場合、幼少期から青年期にかけてはむし歯菌による影響が出やすく、中年期から老年期にかけて、歯周病菌の影響が出現しやすくなるリスクが高くなることがあるようです。
②口腔内の環境の変化
人は出生してから、歯が生えて、歯が生え揃い、やがて親知らずが生えて生涯の歯列が完成します。やがてひとつの歯がむし歯になり治療をおこなったり、親知らず周囲の歯肉が腫れて痛くなり抜歯をしたり、歯の中の神経が炎症を起こして神経をとらなくてはいけなくなったり、様々な治療を受けることになったりするでしょう。それに伴い社会生活の中でストレスの影響を受けたりすることで、食生活の変化や生活環境の変化などによって口腔内の細菌叢でも変化が現れるようになります。
特に、中年期になり歯周病菌が優位な状況になると、歯のぐらつきが出現しやすくなるようです。
③全身の健康状況による変化
加齢による顕著な変化としては、唾液の分泌量が減ることや、舌の機能能力の低下や、口の周りの筋力や咀嚼にまつわる咀嚼筋の衰えだったり、嚥下機能などが低下すると言われています。このことを口腔内フレイルと呼び、最近では歯科医院でのフレイル予防として、積極的に口腔機能訓練がおこなわれるようになりました。主な目的は誤嚥性肺炎の予防です。
その兆候が表れ始める年齢としては、おおよそ嚥下機能が低下してくる50代からだと言われています。
特にシェーグレン症候群の方や、糖尿病の方は、唾液量の減少による影響は深刻です。水分量が少ない食べ物の嚥下時にむせやすくなったりするそうです。
ご高齢の方で、今まで使っていた義歯が外れやすくなったり、発音がしにくくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりしている時は、もしかしたら口腔機能が低下してきているサインなのかもしれません。
