こんにちは。歯科医師の高橋(寿)です。
新緑がまぶしく、日差しもだんだんと初夏のように感じられるこの頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
5月は気候も安定していて、心も体もリフレッシュしやすい季節ですね。ちょっとしたお口の違和感にも気づきやすくなる時期かもしれません。

今日はそんなタイミングにこそ知っておいてほしい、「歯周病」についてのお話です。
今回は、患者さんからよくご質問をいただく「歯周病」について、なるべくわかりやすく、かつ専門的な視点も交えてお話ししたいと思います。
◆ 歯周病とは?
歯周病とは、歯を支えている組織(歯周組織)に起こる慢性の炎症性疾患です。具体的には、
- 歯肉(歯ぐき)
- 歯根膜(歯の根を骨に繋げる線維組織)
- セメント質(歯根の表面を覆う硬組織)
- 歯槽骨(歯を支える骨)
この4つの組織のうち、特に歯槽骨が破壊されることで、歯がグラグラして最終的には抜けてしまう病気です。
◆ なぜ歯周病になるのか?
歯周病の主な原因は、歯垢(プラーク)の中にいる歯周病原菌です。代表的な菌には、
- Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバーリス)
- Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)
- Tannerella forsythia(タネレラ・フォルサイシア)
などがあります。これらの菌が歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)に棲みついて毒素を出し、慢性的な炎症を引き起こします。
◆ なぜ骨が溶けるのか? 〜「免疫反応」と「破骨細胞」の関係〜
患者さんによく「なぜ歯ぐきが腫れるだけじゃなくて骨まで溶けるの?」と聞かれます。
実は、骨が溶けるのは歯周病菌そのものが骨を溶かすわけではありません。
正確には、私たち自身の免疫反応が骨を溶かしてしまうのです。
● 免疫が“過剰に”働いてしまう
歯周病菌が歯ぐきに侵入すると、体はそれを異物と認識し、炎症性サイトカイン(IL-1、TNF-α など)を放出します。これは体の防御反応ですが、これが長く続くと、破骨細胞(はこつさいぼう)が活性化され、骨を溶かす作用が強くなってしまいます。
● 破骨細胞とは?
破骨細胞は、骨を吸収・分解する役割をもつ細胞です。通常は骨の新陳代謝に必要な細胞なのですが、炎症が慢性化すると必要以上に働きすぎてしまい、歯槽骨の破壊が進行します。
◆ 歯周病は「沈黙の病気」
歯周病は痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進行するのが特徴です。気づいたときには骨が大きく失われている…ということも珍しくありません。
だからこそ、定期的な歯科検診と正しいセルフケア(ブラッシング、フロス、歯間ブラシなど)が何よりも大切です。
◆ まとめ
- 歯周病は、歯を支える骨が溶けてしまう病気です
- 原因は歯周病菌と、それに対する体の免疫反応
- 骨を溶かすのは「破骨細胞」が関係している
- 自覚症状が出にくいため、定期検診が重要です
お口の健康は、全身の健康とも密接に関係しています。具体的には、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、誤嚥性肺炎、認知症、低出生体重児などです。
「最近、歯ぐきが腫れやすい」「歯がグラつく気がする」という方は、ぜひ早めに歯科医院でチェックを受けてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!