こんにちは。歯科医師の山岸です。
歯の外傷の臨床診断、分類について書いていきます。🦷
⭐️歯の損傷
○歯冠破折
破折が臨床的冠部のみに限局されているもので、以下の分類があります。
⚫︎不完全破折(亀裂)
実質欠損を伴わないエナメル質の不完全な破折であり、エナメル質表面に亀裂を
認めます。
⚫︎露髄を伴わない歯冠破折
歯髄には達しないエナメル質・象牙質の実質欠損です。
⚫︎露髄を伴う歯冠破折
露髄を伴うエナメル質・象牙質の実質欠損であり、多くの場合、破折面にピンク
色の歯質の一部が確認できます。
○歯根破折
歯根部に破折が見られ、セメント質と象牙質、歯髄を含む歯根の破折です。
歯冠は正常な位置、または挺出や転位して見えることがあります。
エックス線写真では、根尖側破折片が歯冠側破折片から離れたり、ずれて見える
ことがあります。
○歯冠-歯根破折
破折が臨床的歯冠及び歯根の双方に及ぶものです。
破折線が歯冠から解剖学的歯頚線を含み、歯根に達している破折です。
破折が歯冠から歯肉縁下に繋がることで確認できます。
破折片が動揺している場合は、歯髄に達し、痛みが強いことが多いです。
⭐️歯周組織の損傷
○震盪
異常な動謡や歯の転位を伴わない、歯の支持組織の損傷です。
視診及びエックス線診で異常は認められないものの、打診に対する違和感や疼痛
があります。
歯根膜に断裂はありません。
○亜脱臼
歯の転位はありませんが、病的な動揺亢進を伴う歯周組織の損傷です。
歯根膜の一部に断裂があり、歯肉溝からの出血を伴う場合もあります。
○脱臼
病的な動揺及び変位が認められるものであり、以下の分類があります。
⚫︎側方脱臼
歯の歯軸方向以外への転位をさします。
視診及びエックス線診で正常な位置から転位したように見えます。
唇舌侧、近遠心側方向への転位があります。
⚫︎陥入
歯の根尖方向への転位をさします。
歯が短くなったように見え、重症例において、歯が歯肉縁下に入った場合は、歯
がなくなったように見えることもあります。
エックス線写真では歯は根尖側に転位し、歯根膜腔が不明瞭または連続性を欠い
て見えます。
乳歯の場合は、後継永久歯と受傷乳歯の位置関係、永久歯歯胚の位置異常の有無
等を確認する必要があります。
⚫︎挺出
歯の切縁方向への転位をさします。
歯が伸び出たように見え、動揺が大きいです。
エックス線写真では歯が歯槽から部分的に離れて見え、根尖部で歯根膜腔の幅が
拡大してみえます。
○脱落(完全脱臼)
歯槽からの歯の完全な脱離をさします。
臨床的診察及びエックス線検査において、歯が歯槽内に存在しないです。
○歯の外傷に伴う歯槽骨骨折
歯の側方脱臼等に伴う歯槽突起の一部骨折をさします。
歯の動揺度を検査する際に、隣接する2歯以上の歯が同時に動きます。
歯肉に、内出血、裂傷、腫脹を伴うことが多く、歯肉上に指腹を当てると歯槽骨
表面に段差を触れる場合もあります。
エックス線学的には白線が断裂したり、骨折線が見えることがあります。
以上、歯の外傷における診断と分類でした。
次回は外傷に対する処置も書いていこうと思います。🦷
※用語解説
実質欠損:歯に穴等の欠損がある状態
歯冠:歯茎より上に位置する部分
歯根:歯茎より下に位置する部分
露髄:歯髄が歯の外側に露出した状態
歯髄: 歯の内部にある神経
歯頚:歯冠と歯根の境目
歯軸:歯根と歯冠を貫く軸
転位:歯が正常な位置から前後左右にずれている状態
打診:歯を叩く診査
歯周組織:歯を支える歯の周りの組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)
歯根膜腔:歯根膜と歯根との間にある隙間
歯胚:歯のもととなる組織
切縁:歯の先端部分
歯槽突起(歯槽骨):歯を取り囲んで支持する骨
参考:日本外傷歯学会歯の外傷ガイドライン
