みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。
未だ夏を思わせるような暑い日が続いておりますが、みなさまお変わりなくお過ごしでしょうか。
先日、患者さんから「歯が脆くなるから神経を取る治療は絶対にしたくない」と言われました。
神経のお部屋は血流が豊富なので、神経を取る治療をすると血流が途絶えてしまい、歯が枯れてしまうようなイメージを持つ患者さんが多いように感じます。果たして神経を取る治療をすると本当に歯が脆くなるのでしょうか?
本日は根っこの治療と歯の強度についてのお話をさせていただきます。
”神経を取った歯”は”神経がある歯”と比べて水分量が若干少ないかほぼ変わらないという論文があります(Endodo Dent Traumatol 1994; 10(2): 91-3.)。また、”神経がある歯”と”神経をとった歯”の水分量の差が歯の強度に影響があるかを調べた研究では有意差がないという結果になりました(J Endod 1992: 18: 209-15.)。
”神経がある歯”と”神経を取った歯”に穴を開けてどのくらいの力で割れるかを調べた研究では有意差がないという結果になりました(J Endodo 1992; 18: 332-5.)。
以上のことから、”神経を取った歯”は脆くなるというのは誤りであることが分かります。
しかしながら、”神経を取った歯”が後々割れて抜歯になってしまうケースは日々の臨床でもよく目にします。根っこの治療をした歯が抜歯になった理由を調べた研究では、歯の破折が6割という結果であり、実際に根っこの治療後に歯が割れてしまうケースが多くあることが分かります。
では、なぜ根っこの治療をした歯は割れてしまうのでしょうか?
根っこの治療をした後は被せ物や詰め物(修復処置)を行いますが、根っこの治療と修復処置による歯の強度の低下を調べた研究があります(J Endod 1989; 15: 512-6)。虫歯がない歯を抜歯し、①根っこの治療後に被せ物を入れるための形作り=歯を削る処置をしたもの(窩洞形成)、②窩洞形成後に根っこの治療をしたもの、の歯の強度を調べた実験です。
結果は、①、②ともに根っこの治療では歯の強度は5%しか低下せず、歯を大きく削った場合(MOD窩洞形成)は歯の強度が63%低下したことが分かりました。以上より、根っこの治療による歯の強度への影響は小さく、歯を削る量が大きくなった際に歯の強度が低下すると言えます。
では、根っこの治療をした歯が割れないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
根っこの治療をした歯の生存率と歯をぐるっと1周覆うクラウン修復の関係性を調べた研究があります(J Proshet Dent 2002; 87: 256-63.)。これは、クラウン修復が根っこの治療を行なった歯の生存率の向上に関係するという仮説の検証として行われた研究で、根っこの治療を行なった歯においてクラウン修復していない歯は6倍喪失のリスクが高いという結果になりました。特に奥歯では歯の大部分を覆うクラウン修復(咬頭被覆)にした方がよく、前歯に関してはクラウンにしなくても生存率および成功率に変化がないことが分かりました。
まとめると、
・”神経を取った歯”は”神経がある歯”と比べて脆くなることはほとんどない
・根っこの治療をした歯が割れてしまうのは根っこの治療による影響よりも被せ物を入れるために歯を削る量に依存する
・根っこの治療をした後は、奥歯はクラウン修復にした方が歯が割れるリスクを小さくすることができる
ここまで読んでいただきありがとうございました。