根っこの治療の質と被せ物の質がその歯の将来に及ぼす影響について その①

みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。

蒸し暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

先日、根っこの治療が終了した患者さんに被せ物の説明をしていたところ、

「被せ物は何でも良いよ。お任せで!」と言っていた方がいました。

果たして、根っこの治療がしっかり行われたら、被せ物はどんな物でも良いのでしょうか。

本日は、根っこの治療の質(=歯内療法の質)と被せ物の質(=歯冠修復の質)がその歯の将来(=予後)にどのような影響を及ぼすかについてのお話をいたします。

1980年代半ばに、歯冠修復の失敗によって根管充填された根管内に細菌感染が起こることが注目されるようになりました。1995年、RayとTropeによって歯内療法の質と歯冠修復の質が予後に及ぼす影響について大規模な調査が行われました。テンプル大学で治療を行った1010本の根管治療歯のX線写真を調査し、歯内療法の質と歯冠修復の質、根尖部の状態を評価しました。尚、ポストのある歯は除外されました。評価基準は以下のとおりです。

・良い歯冠修復(=Good Restoration):被せ物がピッタリ合っている。

・悪い歯冠修復(=Poor Restoration):被せ物のヘリが合っていない、隙間や段差あり。二次う蝕。

・良い歯内療法(=Good Endo):根管充填材が根管に隙間なく緊密に充填されている。X線上の根尖から0-2.0mm以内に充填されている。

・悪い歯内療法(=Poor Endo):根管充填材と根管の間に隙間がある。根管充填がアンダーかオーバー。

 

① Good Restoration・Good Endo

 

 

 

 

② GoodRestoration ・ PoorEndo

 

 

 

 

③ PoorRestoration ・ GoodEndo

 

 

 

 

④:PoorRestoration ・ Poor Endo

 

 

 

 

結果は以下のとおりです。根尖周囲炎がない割合を%で表しています。

 

 

 

 

 

①:GoodRestoration ・ Good Endo:91.4%、

④:PoorRestoration ・ Poor Endo:18.1%、

 歯内療法と歯冠修復の質のどちらも良ければ良い結果に、どちらも悪ければ悪い結果となりました。これは明らかだと思いますが、

②:GoodRestoration ・ PoorEndo:67.6%、

③:PoorRestoration ・ GoodEndo:44.1%、

となり、この調査では「歯内療法の質よりも歯冠修復の質の方が予後に大きな影響を及ぼす」ことが分かりました。根っこの治療の質が良くなくても被せ物がピッタリ合って入れば根っこの周りに病気ができないという少々意外な結果となりました。

 

2000年には、Tronstadがオスロ大学で1001本の根管治療歯をレントゲン写真で評価する研究が行われました。今回はポストがある歯とない歯を含み調査が行われました。

 

 

 

 

 

 

②:GoodRestoration ・ PoorEndo:56%、

③:PoorRestoration ・ GoodEndo:71%、

となり、Ray&Tropeの研究とは反対に「歯内療法の質の方が歯冠修復の質よりも予後に大きく影響する」という結果となりました。

 

一体、歯内療法と歯冠修復の質のどちらが重要なのでしょうか?

本日はここまでとします。次回、この続きをお話しいたします。

 

まだまだ、暑い日が続きますが、くれぐれも熱中症にはお気をつけ下さい。