根未完成歯の治療について③

みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。

雪解けの水も徐々にぬかるんで参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。

前回、前々回、根っこが成長途中の歯である根未完成歯の治療方法についてお話をいたしました。

本日は、前回の続きで根未完成歯の治療法の一つである、③リバスクラリゼーションについて説明いたします。

 

まず、前回の復習です。根未完成歯の治療法は以下の3つになります。

①アペキソゲネーシス

②アペキシフィケーション

③リバスクラリゼーション

 

①アペキソゲネーシス、は神経が生きている歯に対する治療法で、根っこの内側の厚みを増しながら根っこの成長がみられます。また、神経の反応は常に正常です。

②アペキシフィケーションは、神経が死んでいる歯に対する治療法で、根っこの内側の厚みは増加しませんが、根っこの先に硬い組織が形成され、開いていた根っこの先が閉じます。神経の反応は回復しません。

 

それでは、③リバスクラリゼーションについて説明いたします。

 

③リバスクラリゼーション

”リバスクラリゼーション”は、前回お話しした、②アペキシフィケーションと同様、神経が死んでしまった根未完成歯に対する治療法になります。

”アペキシフィケーション”と異なる点は、一度神経が死んでしまった根未完成歯において、血管再生が起こることによって血流が回復し、根っこの内側の厚みを増しながら根っこが成長することです。その後、治癒の状況によっては神経の反応が回復することもあります。

治療方法は、神経のお部屋をNaOClという薬液を用いてよく洗浄を行い、水酸化カルシウムまたは3mixというお薬を入れて1〜4週間程度様子をみます。ここで重要なことは、神経のお部屋を必要以上に触らないことです。特に根尖にはあまり触れないようにします。その後、症状がなくなったらEDTAという溶液でよく洗浄し乾燥させた後に、ファイルまたは探針という尖った器具を根っこの尖端から2mmオーバーするまで挿入し、出血を促し根っこのお部屋に血液を満たします。ここで行った意図的に出血を促す操作は、AAE(American Association of Endodontists: 米国歯内療法学会)が提唱する方法で、出血を起こらせなくても根っこの先から神経と似た組織が自然に上がってきて治癒が起こるケースもあります。その後、MTAというセメントを置き、さらにグラスアイオノマーセメントやコンポジットレジンにより蓋をします。これで、治癒が良好であれば、根っこの周りの骨が回復し、根っこの内側の厚みを伴う根っこの成長が起こり、さらに治療前には反応がなかった神経の反応が回復します。”アペキシフィケーション”では、根っこの内側の厚みが生じないため、歯の破折リスクがありましたが、”リバスクラリゼーション”ではその点が改善されると考えられます。

図1はリバスクラリゼーションの症例で、根っこの周りの病気が治り、根っこの内側の厚みが増加し、根っこが成長している様子が分かります。一方、図2のアペキシフィケーションでは、13日後に根っこの周りの病気は治癒傾向ですが、根っこの内側の厚みは増加していません。

”リバスクラリゼーション”の方が良いなら、全てこちらで治せば良いのでは?と思われるかもしれませんが、必ずこちらで治せるわけではありません。根っこのお部屋に感染が疑われるケースでは成功率が低いと言われています。図2のケースでは、歯が割れて応急処置を受けた歯に対しての処置であり、根っこのお部屋の中に感染が疑われます。また、根っこの尖端の広がりが狭いもの、つまり根っこがだいぶ成長している歯では”リバスクラリゼーション”は起こりづらいとも言われています。

転んだり、遊んでいて歯をぶつけたときに歯が割れたり折れたりしたときには、時間が経つと感染が進んでしまうので、早めに処置を行った方が良いです。根未完成の歯であれば、ここで説明したいずれかの処置により治療が可能である場合もあります。

お困りの際には、是非ご相談ください。ここまで読んでいただきありがとうございました。