みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。
日毎に春らしくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
先日、検診を希望し来院された患者さんのレントゲン写真を撮影すると右下奥歯に神経のお部屋まで到達しそうな大きな虫歯がありました。患者さんのお口の中で風をかけたり、歯をノックしたりしてもしみる症状や痛みはなく、神経が正常に機能しているかを判定する検査として、歯に氷を当てたり、別の刺激を加えて確認を行っても正常反応が得られたりと特に大きな異常は見られませんでした。このようなケースの場合、大きく分けて以下に示す2つの治療法があります。
①神経のお部屋まで到達したとしても虫歯を全て取り切る方法
→Vital Pulp Therapy(VPT)
②多少虫歯が残ったとしても神経のお部屋までは到達しないようにする方法
→シールドレストレーション
本日はVPTとシールドレストレーションについてお話をいたします。
まず、①のケース、VPTについてです。
VPTとはVital Pulp Therapyの略で生きた状態で神経を残す治療のことです。生活歯髄療法と呼ばれます。虫歯が神経のお部屋と近い場合、虫歯を全て取り除くと神経のお部屋が見えてくる場合があります。その場合、従来の治療法では神経を全て取り除いていましたが、最新の治療法では神経の周りの組織を再生させる作用のあるMTAというセメントで神経のお部屋を覆ってあげることで、神経の周りの組織を再生させることができ、神経を取らずに残すことができます。
治療法は以下の通りです。
1)ラバーダム防湿と呼ばれるゴムのシートでお口を覆い、神経のお部屋に唾液が入らない状態を作る(無菌的環境作り)
2)虫歯を取り除く(神経が露出する)
3)露出した神経の一部を取り除き、止血およびその周りを消毒する
4)MTAで神経のお部屋が見えた部分を覆う
5)細菌が神経のお部屋に入り込まないようにMTAの上にさらに別のセメントを詰める
6)エックス線検査や神経が正常であるかの検査を行い問題がないことを確認した上で最終的な被せ物やプラスチックの材料による詰め物を行う
一方、②のケース、シールドレストレーションは、
虫歯を神経のお部屋の手前まで取り除き、残った虫歯を固めて動けないようにする方法です。
治療法は以下の通りです。
1)神経のお部屋に到達しないところまで虫歯を取り除く
2)プラスチックの材料による詰め物を行う
3)必要に応じて最終的な被せ物を行う
①、②どちらの方法についても、神経のお部屋に炎症が起こり強い痛みが生じた場合などには神経を取る処置が必要になる場合があります。定期的にエックス線検査や神経が正常であるかどうかの検査を行う必要があります。
①の方法はMTAセメントの開発によって近年行われるようになった治療法であり、神経を残すことができるという点が最大のメリットです。多少痛みが生じていても神経のお部屋の深いところに細菌感染が及んでいないケースでは成功している報告もたくさん挙げられており、適応範囲が広がっています。
このような最新の治療法に興味のある方はお気軽にお声がけください。