歯の変色

みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。

寒さが日ごとに増します今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

 

先日患者さんから、

「子供が遊具で遊んでいたときに歯をぶつけて、しばらくすると歯が少し黒くなってきたんですけど、先生、これは大丈夫ですか。」と聞かれました。歯の変色は様々な原因が考えられますが、歯をぶつけて変色が起こった場合は、知らず知らずのうちに、歯の神経が死んでしまっていること(歯髄壊死)があります。

本日は、歯の変色についてお話をしたいと思います。

 

歯の変色は、大きく分けて外因性の変色と内因性の変色の2つに分けられます。外因性の変色の主な原因としては、日常的に摂取しているワイン、コーヒー、紅茶、タバコ、適度に変色された食品などがあげられます。これらによる変色は歯の表面で見られ、歯科医院で行われる専門的なクリーニング(PMTC)によって比較的容易に落とすことができます。内因性の変色は、さらに全身的な原因と局所的な原因に分けられます。全身的要因には、薬剤、遺伝性疾患、代謝性疾患、血液学的疾患があります。局所的要因には、①歯の神経の障害に起因するもの、②医原性の変色、③加齢による変色、④MTAセメントによる歯質の変色があげられます。

 

①歯の神経の障害に起因するもの

歯をぶつけてしまったとき(外傷)や歯の神経の内部で出血が起こったとき、歯の神経が死んでしまったことにより、歯の変色が起こることがあります。

外傷を受けた歯が変色するメカニズムはまだよく分かっていませんが、その原因の1つに硫化鉄があげられます。外傷時に断裂した血管からヘモグロビンが歯の内部の象牙質内(象牙細管)に浸透し、その後さらなるヘモグロビンの溶解が起こり、鉄を分離します。鉄は象牙細管内で壊死組織の分解産物である硫化水素と結合し、灰色がかった硫化鉄を生成します。歯髄内出血や歯髄壊死によっても同様にヘモグロビンが象牙細管内に浸透し、変色が引き起こされます。

 

②医原性の変色

典型例は、神経を取り除く治療の際に、神経を取り残してしまい、死んだ神経が取り残されたことにより歯の変色が引き起こされ灰色がかった黒色となります。少し難しい話になりますが、神経のお部屋の中の血液が溶血すると、それによりヘモグロビンを放出し、ヘモグロビン中の鉄が硫化水素と結合した後、細菌により硫化鉄が生成され非常に暗い色素を呈すると言われています。また、神経のお部屋に古いお薬が取り残されていた場合も、歯の内部の象牙質にそれが浸透し変色を引き起こす原因となることがあります。その他、アマルガムという金属の詰め物がされている場合、金属イオンの放出によっても変色が引き起こされることがあります。

 

③加齢による変色

加齢とともに、歯の表層にあるエナメル質が薄くなり内部の象牙質の色が透けて黄ばみのように見えたり、長年にわたって摂取した飲食物やタバコにより歯が着色されていくため外因性の変色と合わさったものであると言えます。

 

④MTAセメントによる歯質の変色

MTAセメントは生体親和性に優れ、硬化すると膨張し、細菌の侵入を防ぐ密度が高く硬い組織を作ることが分かっており、治療の過程で神経のお部屋が見えてしまった際に、神経を一部分のみ取り除き、その他の神経を温存するような治療で有効であることが分かっており、その使用が推奨されています。しかし、その一方で、硬化後に歯の上部が灰色に変色することが報告されており、特に見た目が気になる前歯での使用には注意が必要であると言われています。

 

歯の変色には様々な原因があり、場合によっては神経の治療が必要になることがあります。表層の着色についてはクリーニングにより改善させることができるため、歯の変色が気になる方は是非お気軽にご相談ください。