下顎の親知らずの抜歯について

みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。

秋も深まり肌寒い季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

先日、下の奥歯が痛いという症状で来院された患者さんのお口の中を拝見すると、下顎の親知らずの周りで歯周病が進み、痛みや腫れがみられました。以前からこのような症状を繰り返しており、特に疲れているときに症状が顕著に現れているようでした。下顎の親知らずの歯周病と診断し、このまま放っておいても体調によって痛みや腫れを繰り返すと判断し、患者さんの希望も踏まえて抜歯を行うことになりました。

本日は下顎の親知らずの抜歯について、お話をしたいと思います。

下顎の親知らずを抜くときに注意が必要なのが、親知らずの下を通っている、下顎管という管です。この管の中には神経が通っています。この神経がどんな役割をしているかというと、歯茎や唇の感覚をコントロールしており、親知らずの根っこの先と神経との距離が近い場合、抜歯の際に力がかかったり、傷害してしまうことで、麻痺や痺れが起こる可能性があります。まれに、親知らずの根っこと神経がくっついていたり、親知らずの根っこと根っこの間を神経が走っていることがあり、そのような場合は神経を傷害してしまう可能性が高く抜歯を見送る場合があります。神経を切ってしまった場合には、生涯麻痺が残ることがありますが、力がかかり抜歯後に麻痺や痺れが生じた際には、1週間から2週間程度で回復することがほとんどです。

また、下顎の親知らずの場合、骨の中に埋まっていたり、横向きに生えていることが多く、そのままでは抜くことができないケースがあります。骨に埋まっている場合には、歯茎をめくって骨を一部どかしてあげる必要があります。横向きに生えている場合は、隣の歯との間にスペースがなく、そのままでは引っかかってしまい抜くことができないため、歯を分割して割って抜くことがあります。歯茎をめくった場合は、そのままでは傷が開いてしまうため、めくった場所を縫い合わせる必要があります。このように、下の親知らずの抜歯は抜くのが難しく、抜歯後に腫れや痛みが生じるケースがあります。

今回のケースでは、横向きに生えており一部骨の中に埋まっていましたが、幸い抜歯後に痺れや麻痺の症状はみられず、痛みや腫れもほとんどみられませんでした。抜歯後、歯茎の状態は回復し経過も良好です。

下顎の親知らずについて悩みがある方は一度ご相談ください。