お子さまにMFTが必要な理由

こんにちは。歯科医師の岩谷です。

最近よく子供の歯並びについて相談を受けることがあります。歯と歯の間に大きな隙間がある子や、反対に隙間が全く無く歯がデコボコに生えている子、奥歯で咬んだときに前歯が全く咬み合わず隙間が空いている子、上の前歯が下の前歯よりも前に出ているいわゆる出っ歯など、様々な悩みがあります。このように歯並びが異常な状態を不正咬合といいます。この不正咬合、実は様々な癖が原因で起こることが多いのです。例えば、舌を前方に出す癖があると、上下の前歯を内側から外側に向かって押し出す方向に力がかかり、前歯が噛み合わない状態を作ったり、出っ歯になることがあります。また、指しゃぶりや爪、唇を咬む癖も同様に出っ歯の原因になることがあります。舌によって、お口の外側へ力がかけられます。反対にお口の周りの筋肉によってお口の内側へ力がかけられます。お口の内側と外側への力のバランスが崩れると不正咬合を生じさせてしまうのです。

お子様にこんな癖はありませんか?
・口呼吸のため唇を閉じて鼻呼吸をしながら噛めない
・前歯の間から舌が前に出て舌足らずな発音になる
・帰宅時のガラガラうがいや歯磨きの後のブクブクうがいが上手くできない
・錠剤が飲みにくい

特に近年、口呼吸が口腔機能だけでなく全身の健康状態に与える影響が注目されています。お子さんのお口の癖を放っておくと以下のような悪い影響が考えられます。
・風邪の予防がしにくい
・アレルギー疾患がしょうじやすい
・歯周病になりやすい
・口臭が強くなりやすい
・矯正治療の効果が得にくい

また、飲み込みの際に舌はどこにいるでしょうか?飲み込み時に舌が上顎の裏にくっついているのが正しい舌の位置です。お子様の舌は飲み込みの際に、前方の歯にくっついていないでしょうか?人は一日に平均600回、飲み込みの動作をすると言われています。舌が上顎の裏にくっついている場合は、飲み込みの度に上顎に力がかかるので上顎の成長を促すことができますが、前方に位置している場合は歯を外側に押す方向に力がかかるため、不正咬合の原因となってしまいます。

お口に関わる悪習癖やお口の内外側への力のバランスを改善させるために用いられるものがMFT(Myo Functional Therapy: 口腔筋機能療法)です。
MFTは食べる、飲み込む、発音する、呼吸する、などお口と関係のある機能を改善する訓練です。通院時のレッスンと、毎日のご家庭での訓練で、よい歯並びを維持できるための環境を整えるのです。歯は、舌、口唇、頬などの口腔周囲筋からたえず圧力を受けています。食べる、飲み込む、発音する、呼吸するなど、お口と関連した機能に問題があると、歯にかかる筋圧のバランスが崩れてしまいます。そして歯は正しい位置を保つことができなくなり、不正咬合や矯正歯科治療の後戻りの原因となります。口腔周囲筋を訓練することより、筋圧のバランスを改善して、正しい歯並びを維持するための環境を整えることがMFTの主な目的です。

MFTは矯正治療の初期段階として非常に有効な手段です。しかしながら、本人のやる気と周りの家族の協力が必要となる地道なトレーニングです。