喫煙がお口の健康に与える影響について

こんにちは。歯科医師の岩谷です。

まだ少し肌寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
本日は“喫煙がお口の健康にあたえる影響について”お話いたします。

先日、歯周治療に通っている患者さんから「タバコはやめた方がお口にとって良いですか?」と聞かれました。
喫煙は歯や歯肉の着色などお口にさまざまな影響を与えます。口腔・咽頭がんの発生率が3倍になるほか、味覚が鈍くなったり、口臭を悪化させたりします。1980年代ごろより、喫煙者と非喫煙者で歯周病の進行具合に差があることが注目され始め、現在では喫煙は歯周病の大きなリスク要因であることもわかっています。
タバコには4000種以上の化学物質が含まれ、そのうち40種類は発がん性物質と言われています。タバコの三大有害物質は①ニコチン、②タール、③一酸化炭素、です。ニコチンは依存性が強く、禁煙しようと思ってもなかなかやめられないのは、これが原因です。タールはいわゆるヤニで強い発がん性があります。タバコを吸っていると、住居の壁が黄ばんだりベタベタしたりするのは、タールのせいです。また、タバコは低い温度で不完全燃焼するため、一酸化炭素が発生します。一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと非常に強く結びつきます。普通なら、ヘモグロビンは酸素と結びつき、体中に酸素を運搬するはたらきをもっているのですが、一酸化炭素と結びつくと、体への酸素供給が妨げられます。その結果、タバコを吸う人特有の、肌の老化が起こります。
喫煙者の歯ぐきが暗紫色になるのは、ニコチンの毛細血管収縮作用と、一酸化炭素が原因です。ニコチンの血管収縮作用により、組織の血行は悪くなります。また、一酸化炭素がヘモグロビンと結合することで、血液の色自体もどす黒くなります。このような理由で、歯ぐきは健康なピンク色ではなく、暗紫色になります。メラニン色素の沈着も強く認められるほか、辺縁歯肉がロール状に肥厚し、線維性でゴツゴツとしています。これは見た目だけでなく、実際に治療をしていても感じることができます。
喫煙は歯周病にも影響があります。喫煙の歯周病への影響は、①かかりやすい、②気がつきにくい、③治りにくい、の3つです。まず、生体の本来の免疫機能が喫煙により妨げられるため、歯周病にかかりやすくなります。喫煙者は非喫煙者に比べて罹患率が高く、重度に進行した人の割合も高いことが知られています。また、ニコチンの血管収縮作用により炎症症状が隠され、歯周病が進行しても出血などの自覚症状が出にくくなります。そのため、発見が遅れてしまい、気づいたら重度の歯周病になっていたということがあります。歯ぐきに赤みや腫れがそれほど目立たないのに、歯周組織の破壊が進んでいることもあります。さらに、いざ治療を始めても、喫煙者の歯ぐきはは硬くて沈着物の除去が難しく、歯周組織の修復も阻害されているため、思うように治療効果が上がらないのです。また、喫煙者の方が非喫煙者より重度の骨吸収がみられる割合が高いことが分かっています。