歯の破折について

                                                 こんにちは。かさはら歯科医院のドクター:高橋千桂です。紅葉も終わりに近づいて、冬の気配が感じられるようになってきましたね。今回は歯の破折について書きたいと思います。

 

歯根破折(しこんはせつ)の症状……歯茎が腫れ、おでき、激痛、無症状のことも

骨が折れると「骨折」と言いますが、歯の場合は「破折(はせつ)」と呼びます。口の中で普段目にしている白い部分(歯冠部)が割れたりかけたりすることを歯冠破折(しかんはせつ)と呼び、歯茎の中にある歯の根っこの部分(歯根)が割れたりかけたりすることを歯根破折(しこんはせつ)と呼んでいます。

歯根破折は、ほとんどがそれまでに神経を取り除いたりした治療が行なわれた歯に起こります。神経を取り除いていない生きている歯には、ごくたまに起こる程度で次のような症状がよく見られます。

■歯茎が腫れる
まるで歯周病が進行したかのように、その前後の歯に比べて明らかに腫れたり膿んだりする。

■歯茎におできが出来る
歯にヒビが入っている状態では、外から目視で確認できないため、根の先に膿の袋が出来る歯根嚢胞(歯根嚢胞)と同じ症状となることも。

■差し歯が取れる
何度戻しても良く取れる前歯の差し歯は、歯の根が割れて開き土台が抜け落ちたため。もし差し歯に金属などの棒状のものが付いていたら、歯の根にヒビが入った可能性が高い。棒状の土台が長ければ長いほど歯根破折の確率も高まる。

■違和感
噛むと痛んだりしみたりするが、噛まなければ痛まない。歯の根にヒビが入っているときによく見かける。

■無症状
割れたり折れたりしても、膿などが少量の場合、数年間も痛みなどの自覚症状がないこともある。

■根の病気が改善しない
根の治療を繰り返しても、腫れや根の奥からでてくる膿がなかなか止まらない、治療の効果が挙がらない場合、既に歯にヒビが入っている場合も。

■激痛
ごくまれに神経が生きている歯でも強く噛み締めたりすると割れてしまうことがあります。そんな時は当然激痛となります。

歯が割れたり折れたりした瞬間に音と衝撃を感じることもありますが、大抵は自覚できない場合が多いようです。

歯根破折の治療法……ブリッジ・インプラント・入れ歯など

残念ながら歯根破折の治療の基本は抜歯です。歯に入った僅かなヒビの隙間は歯茎などを腫れる原因となる細菌にとって、まるで細菌専用道路のようなものです。歯ブラシの毛先からは身を守ることができ、さらに奥にまでどんどん入り込んでしまうからです。

歯を抜いた後の選択としては、次のようなものがあります。

1.ブリッジ
残った歯の両サイドの歯を削って、両サイドと抜いた部分を金属で被せつなげる。毎日の取り外し不要。

2.インプラント
抜いた部分のみにチタン製の金属の人工歯根を埋め込み、歯を作る。毎日の取り外し不要。

3.入れ歯
抜いた部分の両サイドにバネと呼ばれる金具を取り付け、歯と歯茎の付いた樹脂のプレートで隙間を埋める。毎日の取り外しが必要。

歯根破折は「歯の臨終」、初期治療や生活習慣の改善が大事

健康な歯がいきなり折れたり割れたりすることはまれで、虫歯の治療が繰り返し行なわれ、神経を取った歯に起こることがほとんどです。たとえ歯磨きを一生懸命していても防ぐことはできません。そのため歯根破折は「歯の臨終」とも言えます。様々な治療で延命した歯が、歯根破折によってその生涯を終えるのです。

歯根破折のリスクを減らすには、できるだけ歯の神経を取らずに済む初期の虫歯のうちに治療を行うことはもちろん、繰り返し虫歯治療を行なわないようにすることが大切になります。そのため定期検診や、正しい歯磨きや規則正しい食生活などの生活習慣を見直すことも歯の寿命を延ばすことにつながります。