歯石は、歯に付着して除去されないプラーク(歯垢)の中の細菌が石灰化することによってつくられます。
もう少し詳しく説明しますと、歯石ができる最初のステップは、歯に付着したプラークの中の細菌が歯にくっつくことです。この細菌は2週間ぐらい経つと歯にくっついたまま死んでしまいます。死んだ細菌はお口の中の唾液の成分によって石灰化します。これが歯石の始まりです。最初に歯について石灰化した細菌の塊の上にまた新たな細菌が付着し、その細菌が死んで石灰化するという過程を繰り返すことで、歯石はだんだんと大きくなります。
歯石ができないようにするためには、細菌の塊であるプラークがついたままにしないように、きれいにブラッシングをすることが大切です。ただし、歯磨きが上手な方であっても、多少の磨き残しはありますから、ご家庭でのホームケアだけではある程度の歯石の沈着が見られるのは致し方ないことかもしれません。

●歯石はお口のトラブルの原因となる
前述したように歯石は死んだ細菌が石灰化したものです。ですから、歯石自体には大きな病原性はないように思われます。しかしながら、歯石の表面はザラザラしており、プラークが付着しやすくなっています。またそのザラザラした表面形状からも付着したプラークをきれいに取り除くことは困難です。この歯石に付着したプラーク中の細菌によって、歯周病や虫歯などの病気が起きやすくなるのは明らかです。事実、歯石を取ってみると、歯石によって覆われていた部分の歯ぐきには歯肉炎が認められることが少なくありません。このようなことから、歯石がついていると不潔に見えるだけでなく、健康のためにもよくありません、歯周病の治療だけでなく、健康な方でも定期的に歯石を取られることをおすすめします。

●歯肉縁上歯石と歯肉縁下歯肉
一般的には、歯石は歯ぐきから上(歯冠側)に沈着しますので、目で見て歯石が着いているのが判ります。しかしながら、歯周病などの病気で、歯周ポケットが深くなったりすると、そのポケットの中、すなわち歯の根っこの部分に歯石の沈着が見られることがあります。前者を「歯肉縁上歯石」と言い、後者を「歯肉縁下歯石」と言います。この「歯肉縁下歯石」は歯ぐきによって隠れているため、通常は目で見て確認することができません。
さらに、この歯肉縁下歯石は、強固に歯にくっついています。これを除去するのは、狭い歯周ポケット内での繊細で精密な操作が求められることもあり、決して容易ではありません。しかしながら、この歯肉縁下歯石が残ってると歯周病は治りませんので除去する必要があります。通常は麻酔をして処置を行うことになります。