自家歯牙移植 その2

みなさん、こんにちは。歯科医師の伊勢円です。

 

自家歯牙移植についての続きです。

 

歯根膜が一部あるいは全部なくなってしまった歯を移植、再植すると、歯根が吸収することがあります。歯根吸収は置換性、炎症性、表面吸収の3つに分類されます。

 

置換性吸収(アンキローシス)は、歯根が吸収されて骨に置き換わることをいいます。骨組織と歯根が癒着した状態です。移植、再植後4ヶ月から1年で発見されることが多いようです。これが歯根の喪失に繋がるような吸収になるか、それともそのまま何年何十年と持つかどうかは長期的に診ていくしかありません。

 

炎症性骨吸収は歯髄腔が感染しており、かつ歯根膜が欠落した歯を移植した場合にみられます。移植、再植後12ヶ月でX線写真で確認できることが多いようです。発見したらすぐに根管治療すれば停止させることができます。停止後は吸収された部分が大きくなければ新付着による治癒が起こります。

 

表面性吸収は表層に限局した吸収で、部分的な歯根膜の損傷によると考えられています。

 

次に歯周組織についてです。

 

歯肉では、歯根膜が約12ミリ骨縁上になるように植立できれば、正常な生物学的幅径が獲得されます。

 

歯槽骨では、移植した歯の歯根膜には固有歯槽骨の形成能があり、移植後3〜数ヶ月くらいでX線写真で確認できます。

 

創傷治癒のメカニズムについて簡単に勉強できました。では、どんな状態であれば移植ができるのでしょうか。

 

まずは口腔内に保存不可能な歯があり、かつ智歯や転位歯など機能に参加していない歯があることが大前提となります。また、外科処置となることに同意が得られ、患者さんの協力性がないと難しいです。あとは高齢でないこと、糖尿病といった疾患がないことがより理想的です。また、移植する歯の歯根の形が弯曲していたり、歯周病に罹患している場合は難しいことがあります。

 

できるかどうか、最初に診査・診断をしていきます。X線写真による診査、歯周病の検査、問診をし、さらに移植予定の歯と抜歯する部位の状態(幅や深さなど)を詳しく分析します。

 

そして、自家歯牙移植が適応だと判断した場合に治療計画をたてていきます。

 

もし虫歯や歯周病で歯を抜かなければならない場合、まずはそに根本的な原因を取り除かなければなりません。そのため、ブラッシング指導や歯周病の治療を先立って、もしくは平行して行っていきます。

 

その後、保存不可能な歯を抜く時期を決定します。主に移植する日と同じ日にすることが多いですが、場合によってはそれ以前に予め抜歯しておくこともあります。

 

次回へ続く