歯を白くしたい2

みなさん、こんにちは。歯科医師の伊勢円です。

前回はオフィスブリーチについてお話ししました。今回は、ホームブリーチとウォーキングブリーチについてです。

ホームブリーチは、日本では2011年に厚生労働省の認可を受けました。歯の型をとって専用のトレーを作り、その中にホワイトニング剤を入れて患者さん自身がご自宅で使用する方法です。ホワイトニングに使うオキシドールは、濃度を守って使えば人体に無害な薬剤です。また、ホームブリーチに用いるオキシドールは、安全のため濃度を低く設定していますので、安心して行うことができます。ホームブリーチには日中に数時間程度使用するタイプと夜寝ている間に使用するタイプがあります。歯科医院に行かなくても自分の好きなタイミングですることができるという利点はありますが、効果は弱くなってしまいます。また、神経の有無にかかわらずできますが、神経のない歯では効果は出にくくなってしまいます。

一方、ウォーキングブリーチは神経をとった歯の髄腔内にホワイトニング剤を封入して歯の内側からフリーラジカルを作用させて色素を分解する方法です。オキシドールは、水と酸素に分解される時にフリーラジカルを発生します。フリーラジカルとは、不安定な状態の電子を含む状態の分子のことで、フリーラジカルは他の物質にぶつかって連鎖反応を起こし、相手の電子を奪い取る時に色素を無色化します。オキシドールは酸素を放出しやすい分子構造をしており、強力な酸化力をもつハイドロキシラジカルが作られやすく、かつ人体に無害であるため、ホワイトニングに最適な薬剤といえます。ウォーキングブリーチでは、抜髄をして根管治療が完了した歯の髄腔内に3035%のオキシドールと過ホウ酸ナトリウムを混和したペーストを封入し、1週間に1回程度薬剤を交換し繰り返すことで歯を白くしていきます。

リスクとしては、放出されるフリーラジカルの逃げ場がないため、フリーラジカルがセメント質を通り抜けて、シャーピー繊維から骨に到達して歯や骨が浸食されてしまうことがあります。また、緊密な根管充填がなされてないと根尖側に到達してしまい、痛みが出ることもあります。そのため、根尖病変がなく緊密な根管充填がなされていることが前提となります。治療が不十分な場合は再治療が必要になります。

フリーラジカルは有機質の変色を無色化する方法なので、天然の歯にだけ作用します。もし、歯の一部にコンポジットレジン等の充填物がある場合はそこは白くはなりません。気になる場合は詰め直しが必要になりますので、ご注意下さい。

()当院では扱っていない方法が含まれます。