レジンと接着

みなさん、こんにちは。歯科医師の伊勢円です。

今日はクリスマスですね。私は先日、鉄板焼きのお店に行き、少しはやいクリスマスディナーをいただきました。初めて目の前で美味しいお肉を焼いてもらって、とっても美味しかったです。(もちろん、感染対策はばっちりでしたよ!)

以前、コンポジットレジンという材料についてお話ししました。今回は、その材料を使った接着による修復の方法について書いていきたいと思います。

まず、「接着」という言葉をご存知でしょうか。辞書には「物と物とがぴったりとくっつくこと、くっつけること」、Wikipediaには「二つの物体が接したときに働く、分子を引きつける力で起こる現象」なんて書いてありますね。

昔から行なわれている治療に、金属の修復物(メタルインレー)を使ったものがあります。これはそのままでは歯とはくっつかず、セメントによる力と歯に凸凹をつけて嵌合することによって付いています。このような付け方を「合着」といい、健康な歯質を削らないと十分な維持力が期待できない方法です。とてももったいないように感じますが、長年これに代わる技術は開発されませんでした。

しかし、アメリカの研究者によって、歯のエナメル質をリン酸で処理すると、当時の歯科材料がエナメル質に「接着」することが、1955年に論文で発表されました。

歯を削って修復物をはめ込む「合着」に対して、歯の表面を化学的に処理すれば歯に非常によくくっつくこと(接着)、またその材料があること(レジン)が発見されたのです。

エナメル質は約95%のハイドロキシアパタイト結晶、約4%の水分、約1%の有機成分で構成されています。ハイドロキシアパタイト結晶は、エナメル小柱という柱状の形をしています。ここにリン酸を作用させると、エナメル小柱の中心と外側で溶けるスピードが異なるため、細かい凸凹が構造が形成されます。この表面に接着材を塗ると、接着材が無数のエナメル小柱に入り込んで硬化し、嵌合することで強力にくっつきます。また、接着材と歯は化学結合もしています。これらの力によって接着材と歯が一体化して強固にくっつくのです。

その後、20世紀後半からは日本で接着材料の研究が進み、世界最高水準の接着修復物が開発、保険適用になりました。また、接着システムの臨床応用は虫歯治療だけでなく、矯正や義歯、予防処置など様々な場面で使われています。

レジンによる修復は歯と修復物をしっかりくっつける治療なので、修復物を維持するために健康な歯を削る必要がありません。そのため、合着に比べて歯を削る量は圧倒的に少なくなります。