口と歯の気になる症状(続編)

こんにちは。歯科医師の高橋(克)です。

本日は薬剤で引き起こされる歯肉増殖症について書いていきたいと思います。

医科および歯科関係者の方は充分ご存じのことだと思われますが、歯肉増殖症は、抗狭心症剤のニフェジピンや、抗てんかん薬フェニトイン、(その他としては免疫抑制剤のシクロスポリン)等のお薬の常用によって引き起こされることがあると言われています。

フェニトイン歯肉増殖症について

好発部位 歯肉、特に歯間乳頭部

好発年齢 10代から青年

性差 なし

臨床症状 上下顎全域にわたって歯間乳頭部を中心に歯肉の弾性硬の肥大がみられる。歯冠が埋没するほどになる場合もある。

治療 投薬の調整と口腔清掃、プラークコントロールで発症を抑制することが多い。

とのことです。(口腔診断プラクティス 医学情報社より抜粋)

その患者さんの体質に合ったニフェジピンやフェニトイン等の代用薬があれば良いのですが、そんな都合の良い話は実際あまりないのかもしれません。それ以外の選択肢がないときに、多くの歯科医療従事者は、歯周治療がうまくいかなかったり、う蝕が再発したり、患者さんの審美的な要求に応えることなどが困難である場合が多々あるわけです。

時折、投薬変更と歯周外科を組み合わせて治療がうまくいったという歯科雑誌の内容や、症例発表を目にすることがありますが、そのような症例は非常に稀なのではないかと思っています。実際の臨床では歯肉からの出血と汚れによって、かなり歯科治療に苦戦されていることが殆どなのではないでしょうか。

まず、歯肉増殖があることで、患者さん自身のプラークコントロールが困難であることも影響します。

歯科医師や歯科衛生士にとっては、歯周治療で歯石取りをおこなう際に、歯肉増殖によって起こる出血などが、視界の障害となって歯石の取り残しが発生したり、保存修復処置及び補綴処置などは、口腔清掃が充分にできないことでの残存プラークや腫脹している歯肉からの出血が原因となり、歯科治療が全般にわたり困難極まりなくなっていることもあるのです。

特に高齢者に多くみられる根面う蝕の処置は苦労されていることが多いのではないでしょうか。

歯科は接着技術を多用する職業なので、歯の表層をどれだけ綺麗にして、乾燥させて接着しやすくするかが、肝になるといわれています。接着力が不充分であれば、近い将来の二次う蝕や補綴物や修復物の脱離のリスクは高いということになります。

そのようなことを踏まえて改めて考えてみると、歯肉増殖症の患者さんにとっては自分の歯を守るという意味で、歯科医院への定期的な健診は特に大切なものとなっているのではないでしょうか。