咬み合わせの要素

みなさん、こんにちは。歯科医師、関です。

長かった梅雨が明け、8月に入ると急に暑くなりましたね。暑さにもコロナにも負けず元気に過ごしていきましょう。

 

さて、今回も豆知識のテーマは『咬合』についてです。

理想とする顎の位置と咬み合わせの要件は以下の9つありました。

①顎関節において関節窩・関節円板・顆頭の位置関係と形態が正常である

②安定した咬頭嵌合位である

③バランスの取れた適切な咬合平面である

④適切なスピーの湾曲、ウィルソンの湾曲がある

⑤歯列形態が左右対称のU字形で連続性がある

⑥舌房が許容されるために十分な咬合高径である

⑦顆路角と連動するような咬頭傾斜角と展開角をもった咬合面形態である

⑧左右側方運動において同じような咬合様式をとる

⑨自由度のある前方・側方の誘導要素

 

前回は①顎関節において関節窩・関節円板・顆頭の位置関係と形態が正常である、②安定した咬頭嵌合位である

についてご紹介しましたので、その続きからです。

 

③バランスの取れた適切な咬合平面である

上の歯と下の歯を咬み合わせたときにできる、咬み合わせの平面です。

定義としては、下顎左右中切歯の近心隅角間の中点と、下顎左右第二大臼歯の遠心頬側咬頭頂の3点を結んでできる平面のことです。すなわち、下の前歯の真ん中の1点と、右と左の下の1番奥の奥歯の外側のそれぞれ1点の、計3点を結んでできた三角形からなる平面です。

この咬合平面上に綺麗にアーチをつくり下の歯が並び、上の歯と咬み合わせたときに、上の歯もこの平面上に綺麗にバランス良く並ぶのが理想です。

また、咬合平面は、カンペル平面や瞳孔間線とほとんど並行になるのが理想とされます。

カンペル平面とは、鼻下点(鼻の下)と耳珠上縁(耳の穴の上)を結んだ平面であり、顔を横から見たときに咬合平面と並行か確認できます。

また、瞳孔間線とは、目の瞳孔を結んだ線であり、顔を正面から見たときに咬合平面と並行か確認できます。

カンペル平面、瞳孔間線と並行に近いと、顔に対して傾きや歪みなしに、歯が並んでいることが分かります。

 

④適切なスピーの湾曲、ウィルソンの湾曲がある

スピーの湾曲とは、下顎犬歯の尖頭から始まり、小臼歯と大臼歯の頬側咬頭を連ねた解剖学的湾曲と定義されます。下の歯の歯列を横から見たときに、下を凸とし、わずかに前後的な湾曲しています。これがスピーの湾曲です。スピーの湾曲の円弧は下顎頭の前方を通過し、円弧の中心は両眼窩を二等分する面上、後涙嚢稜の後方にあるといわれています。すなわち、目のあたりを中心とした、同一円上に顎の関節の前方と下の歯列が並び、下顎は1つの軸を中心に振り子様運動を行うということのようです。

スピーの湾曲が平坦に近い緩やかなカーブを描くことで、下顎機能運動時に安定した機能的平衡咬合を供給するといわれています。

大きな入れ歯をつくる際に、入れ歯が転覆しないように、この湾曲を強調することがありますが、天然歯列で湾曲が強すぎると逆に咬合干渉を招く恐れがあります。

 

今回は、以上までです。次回以降もまた、続きを解説していきたいと思います。