予防について

みなさん、こんにちは。

歯科医師の鈴木 敬です。今はウイルスで大変な時期だと思います。

手洗い、うがい、人混みは避けるなど基本的なことを意識して行っていきましょう。

歯科医院において、口腔の2大疾患と言われる、『う蝕』そして『歯周病』も、最終的な転帰は歯の喪失であり、実際に歯の喪失原因の大半を占めています。

多くの研究から、歯の喪失が一定のラインを超えると咀嚼能力の低下がみられることがわかっており、それが80歳で20本の歯を残そうという8020 運動の論拠にもなっています。すなわち、残存歯数が20本を下回ると、食品を噛むことが不自由に感じる人が増え、またそのことにより軟食傾向など食品の選択行動の変化による生活習慣病やその要因とも言われる内臓脂肪症候群(メタボリック シンドローム)を招いたり、栄養の偏りや食欲の低下による低栄養を招きます。特に低栄養は、長く続くと筋量の維持に必要なタンパク質などの摂取が不充分になり筋力の低下、そして運動能力の低下などを招き、身体的自立が損なわれる要因としても非常に重視されています。その他にも、咀嚼機能が視覚や聴覚、あるいは脳機能(学習記憶能力、認知症等)にも影響を与えるとされており、『咀嚼』という機能を維持すること、機能歯を維持すること、すなわち歯の喪失を防止し全身の健康をも維持することにもつながることがさまざまな研究によって明らかにされてきています。

口は、全身の入り口であり、噛み合わせが崩れる事で体への歪みや症状を引き起こす原因にもなります。

そうならないためにも第一次予防が大切です。

発症前に行なうべきケアには発症後と大きな違いはありません。

しかし、口腔疾患が何もなくても、歯並びや個人スキル、健康への意識、さらに将来罹患しやすいと予測される疾患などは個人によって異なるので、そのケアの具体的な手段は異なるでしょう。そのため、口腔状態の診査診断は健康な人(Public)にこそ必要です。2003年に施行された『健康増進法』でも第1次予防的な健康診断に重点を置いています。

健康状態の診断という意味でも、第1次予防の「診断:Identify」は重要です。

そして「診断:Identify」定期的な健診( 注:検診ではない)によって口腔の健康状態をチェックし、口腔の状況を把握し、将来なり得る疾患を『予防:Prevention」するために、個人個人に合わせたセルフケアの手段を歯科医師や歯科衛生士が提案し、自発的なセルフケアに導くための健康教育と適切なプロフェッショナルケアを定期的に行なうことで生涯にわたる健康の維持「管理:Control」を行なうことを目的としています。

歯科医師になって仕事をする中で、自分の仕事に責任とやりがいがあると思っています。口しか診れないのではなく全身との兼ね合いを診れるようになっていきたいと思っています。