サホライドについて

こんにちは。

歯科医師の角田です。

歯の豆知識のブログにて、長らく『う蝕治療ガイドライン第2版』の内容をまとめさせて頂きましたが、今回はその最後として『う蝕治療ガイドライン第2版』の参考資料として載せられています、フッ化ジアンミン銀という薬剤についてまとめさせて頂きます。

 

フッ化ジアンミン銀、商品名サホライド(ビーブランド・メディコーデンタル社)は1970年に発売された、日本で最初に開発された歯科用薬剤です。当院においては、切削による治療が困難である乳幼児に対して、主にう蝕進行の抑制を意図に使用される薬剤ですが、サホライドの商品説明のページ(https://www.bee.co.jp/pdf/saforide-pf-201506.pdf)によると、その適用はう蝕の進行の抑制だけではなく、知覚過敏の抑制、根管治療、歯髄保護と多岐に渡ります。

 

フッ化ジアンミン銀の主な作用は、硝酸銀によるコラーゲンなどの有機質へのタンパク質固定と、フッ化物による歯質のハイドロキシアパタイトへの反応によるAg3PO4、AgCl、AgSCNなどの塩の形成です。以上の作用が基礎的な効果として抗菌性、プラーク抑制、無機質の耐溶解性、象牙細管の封鎖をもたらし、臨床的な効果としてう蝕の予防、知覚鈍麻が得られます。また、サホライドのフッ素濃度は50000~59000ppmとされ、日常的に使用される歯磨剤に含まれるフッ素濃度の最大(1500ppm)、フッ化物歯面塗布に用いられる塗布剤(9000ppm)と比較するとかなり高濃度である事が解ります。

 

う蝕予防のみならず、様々な効果を持つサホライドですが、臨床上における使用の困難である点も存在します。

1つ目は、塗布部位が黒変する為に、審美部位に用いる事が困難である事です。これはサホライドに含まれる硝酸銀の銀イオンが、象牙質基質タンパク質や唾液中の還元物質下、及び日光の存在下において反応し、銀を作成する事によります。

2つ目は、塗布の際に痛みを覚える可能性がある事です。これはサホライドが歯質への浸透性を備える為に、深在的なう蝕の場合には、一時的に歯髄に影響を与える事がある事に因ります。

3つ目は、誤って歯肉、口腔粘膜に付着した場合に腐食し痛みを伴う事です。これは硝酸銀によるタンパク質固定作用に因るものであり、使用の際には歯肉に触れないように細心の注意を払う必要があります。

 

以上がフッ化ジアンミン銀(サホライド)の特徴となります、使用により得られる利益が非常に大きい薬剤ですが、薬剤自体が劇薬に分類される通り、非常に扱いが難しい側面を併せ持つ薬剤です。適応、使用法をしっかりと把握した上で利用する必要がありますね。