虫歯以外の痛みって。。。

こんにちは。歯科医師の鈴木 敬です。

温度差が激しい日が続きますね。体調には皆さんお気をつけ下さい。

今回は虫歯、歯周病以外での痛みに関して書きたいと思います。

歯科口腔外科学会によるガイドラインによると、

1)筋・筋膜性歯痛 

非歯原性歯痛の原疾患として多く認められる.原因不明の歯痛として遷延するケースには筋・筋膜性歯痛の場合が少なくない.筋・筋膜痛症患者の 11%において非歯原性歯痛を訴えており,咬筋に問題があることが多い。

2)神経障害性歯痛

三叉神経痛の前駆症状としての歯痛,三叉神経痛の歯痛様症状そして多発性硬化症に随伴する三叉神経痛が歯痛症状として出現することが報告されている.顔面部の帯状疱疹も同症状を呈する.帯状 疱疹においてはその前駆症状としての歯痛が出現する場合も少なくない.

歯科治療による神経損傷に起因したと思われる求心路遮断性疼痛もまた難治性の疼痛の原因として挙げられる.

3)神経血管性歯痛

神経血管性頭痛である片頭痛,群発頭痛と歯痛との関連は否めない.片頭痛患者の18%,群発頭

痛患者の 20%に抜歯後幻歯痛が現れ,症例報告ではあるが,Hussain らは歯科治療および外傷により疼痛部位が変化した片頭痛症例を報告している.これら報告は片頭痛発作の誘因に三叉神経領域からの何らかの刺激入力が関与することを示しており,神経血管性頭痛と求心路遮断性疼痛との関連が考えられる.歯科疾患との密接な関連を示唆するものである.

4)上顎洞性歯痛

上顎洞炎の 18%に歯痛があり,非上顎洞炎症例と比較してそのオッズ比は 2.9 であった.上顎洞炎およびその周辺組織の炎症,特に上顎洞癌の初発症状に上顎臼歯部の歯痛があり,全体の 36%にのぼる. また,術後性上顎嚢胞の 9.6%が歯痛を訴える.これらは原疾患による上顎洞内圧亢進や関連痛により生 じた歯痛であることが多い.

5)心臓性歯痛

狭心症などの虚血性心疾患による歯痛が数多く報告されている, 迷走神経を通じた関連痛として上

部顔面痛が起こるとされ,虚血性心疾患に限らず,動脈解離,心膜炎,肺癌などの胸部疾患からによっても 生じる可能性がある.1,215 名の虚血性心疾患患者のうち 71 名(38%)に心発作時に顔面部に疼痛を生じ, これは女性に有意に多かったと報告されている .そのうち 60 名(85%)はいわゆる胸痛と同時に顔面痛を自 覚していたが,11 名(15%)は顔面痛のみであった.

6)精神疾患または心理社会的要因による歯痛

不安や抑うつの身体化やパーソナリティー障害の身体化により歯痛が発現する場合があること

が報告されている.精神障害・心理障害と非定型性歯痛の関連もしばしば指摘されている.大規模な研究は 少ないが,Schnurr らの 120 例の非定型歯痛症例の長期経過を追跡した報告においては,心理障害は危険因子 であるが有意に大きな要素ではないとしている.非定型歯痛患者には,特有の医療への不信感,怒り,猜 疑心,予後に対する不安などによる心身症的な側面が否めない場合もしばしば経験され,心理面への配慮が 必要とされる場合もある.

7)特発性歯痛(非定型歯痛を含む) 

診断基準が不明瞭であるため,集学的な研究はほとんどない.そのなかで Ram らは 3,000 名の電子診療録より非定型歯痛を後向きに抽出し,その疫学的研究を報告した.それによると非定型歯痛と診断された患者 は 64 名(2.1%)であり,患者の 64%において疼痛の原因は不明であった.その他の様々な疾患により生じる歯痛 その他原因が明らかでない歯痛の原疾患には口腔領域への転移癌や白血病,糖尿病などの致命的な全身疾患もありうる.そのため安易な診断は避けるべきである.

上記のように、歯の痛みには様々な原因があります。ですが、まずは、必要な検査を行い、虫歯や歯周病に原因がないか診断した上で進めていくことが必要と思います。その上で、専門医がいる大学病院などの歯科口腔外科での受診も考えることも大切ですね。

少しでも気になる事があればご相談下さいね。