みなさん、こんにちは。歯科医師、関です。
5月も下旬となり、暖かい季節となってきました。みなさん、GWの10連休はどのように過ごしたでしょうか?
僕は、久しぶりに実家に帰りゆっくりしてきました。やはり、実家は快適ですね。
さて、今回は、前回の豆知識でお伝えした「骨造成」についての続きです。
今回は、骨造成の方法の1つである「サイナスリフト」について説明していきたいと思います。
前回のおさらいですが、インプラントとは骨の中に埋入するものであるため、理想的な位置に埋入するだけの骨の高さと幅がないといけません。
そこで、骨が足りない場合は、骨造成を行い足りない骨の高さ、幅を増やすことでインプラントを可能にします。
○サイナスリフトとは
サイナスリフトは、上顎の奥歯のインプラントで骨の高さが不足している場合に行う骨造成術です。
そもそも、上顎の歯が生えている上顎骨には、鼻腔につながる副鼻腔の1つである上顎洞という空洞があり、上顎洞の位置や大きさは個人差がありますが、上顎洞の底面と上顎の奥歯の根はかなり近接しています。
歯を失うと上顎の歯槽骨の吸収と上顎洞の拡大により、インプラントを埋入したくても上顎骨の高さが不足していきます。
高さが足りない状態でインプラントを埋入するとインプラントが上顎洞内に突き出てしまうため、埋入することはできません。
そこで、サイナスリフトを行うことで、インプラントを埋入するための骨の高さを確保します。
○サイナスリフトの治療の流れ
⑴頬側歯肉の切開、剥離、骨窓の形成
…上顎頬側の歯肉を切開し、粘膜を開きます。上顎洞側壁に相当する骨を切削器具で取り除き、上顎洞に器具が入るよう骨に窓を開けます。
⑵上顎洞底粘膜(シュナイダー膜)の挙上
…上顎洞底粘膜(シュナイダー膜)を上方、遠心方向に押し広げ、骨との間に隙間を作ります。
⑶骨補填材の填塞、(インプラント埋入)
…できた隙間に骨補填材を満たします。
このとき同日にインプラントを埋入する場合と、骨のできあがりを待ってから、後日改めてインプラントを埋入する場合があります。
⑷骨片の復位、粘膜縫合
…取り除いた骨片を戻し、粘膜を縫合します。
○サイナスリフトの問題点
サイナスリフトは上顎洞粘膜にアプローチする治療法であるため、上顎洞に炎症などの疾患がある場合は、治療が難しいことがあります。
・上顎洞炎
…上顎洞内に膿汁が溜まっている急性上顎洞炎にサイナスリフトは禁忌です。耳鼻科にて上顎洞炎の治療後でないと行えません。また、急性症状のない慢性上顎洞炎の場合でも、鼻腔と上顎洞の通路である自然孔が閉鎖している場合も、耳鼻科にて自然孔を開存させる手術(ESS)をしてからサイナスリフトをするのが望ましいでしょう。
・上顎洞粘膜の肥厚
…通常、上顎洞粘膜は極めて薄いためレントゲンで確認できませんが、粘膜を確認できる場合は粘膜肥厚があると考えられます。上顎洞粘膜の肥厚があったら必ずしもサイナスリフトの禁忌ではありませんが、肥厚の原因が感染による上顎洞炎の場合は、耳鼻科にて治療を行ってからでないとサイナスリフトは控えたほうが良いでしょう。
・上顎洞貯留嚢胞
…アレルギー性鼻炎の患者さんに多く認められるもので、嚢胞の中に漿液が貯留しています。サイナスリフト自体の支障になるものではありませんが、嚢胞が大きい場合、上顎洞粘膜が裂開してしまいやすくなります。
・臨在した残存歯の根尖病巣
…根尖病巣とは、虫歯が歯の神経まで達し、歯の根の先で病気を作っている状態です。インプラント予定の部分の近くの歯に根尖病巣があるにもかかわらずサイナスリフトを行うと、術後の感染を引き起こしやすいです。