う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶその6

こんにちは。

歯科医師の角田です。

前回は日本歯科保存学会より編著された、う蝕治療ガイドライン第2版より、直接法コンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績について纏めさせて頂きました。その結論として、2つの治療法には臨床成績において優位差はない、という事でしたが、今回はその根拠となる調査について纏めさせて頂きます。

 

1つ目は、長崎大学歯学部付属病院にて行われた後ろ向き調査です。

観察期間は2000年2月~7月、患者93人(男性36人、女性57人、平均年齢54.6歳)、コンポジットレジン修復577症例、鋳造修復128症例において、臼歯部1級、2級コンポジットレジン修復では10年後の推計生存率は83.0%であり、鋳造修復においては84.7%という結果が得られています。

 

2つ目は、札幌市内の一般歯科医院にて行われた臼歯部修復物の後ろ向き調査です。

観察期間は1991年~2005年であり、対象は臼歯部に修復処置を受け、その後1回以上来院した患者95人(男性34人、女性61人、平均年齢33.3歳)でした。結果としてコンポジットレジン修復の10年生存率は60.4%、メタルインレー修復は67.5%でした。尚、再治療が必要となった1番の要因としては、2次う蝕が挙げられています、

 

この2つの調査において、メタルインレー修復と直接法コンポジットレジン修復の生存率を比較すると、大きな優位差は無いか、僅かにメタルインレー修復の方が成績が良いと考えられます。

しかし、直接法コンポジットレジン修復では、MIの理念に基づいたう蝕除去を行い、確実な接着操作を行うことによって、健全歯質を可及的に保存し、審美的に修復する事が可能です。よって、臼歯部の咬合面に対しては直接法コンポジットレジン修復を行う事が推奨されると言えるでしょう。一方で、臼歯部隣接面に対しては、症例毎に窩洞の形態が異なり、修復の難易度が大きく異なります。したがって、確実な接着操作と充填操作を行う事が出来る症例においては、メタルインレー修復よりも、直接法コンポジットレジン修復が推奨されると考えられます。

 

以上、直接法コンポジットレジン修復とメタルインレー修復の診療成績に関する調査、臼歯部におい直接法コンポジットレジン修復を選択する利点について、う蝕治療ガイドライン第2版より纏めさせて頂きました。

 

次回は直接法コンポジットレジン修復が虫歯や破折によってやり直しが必要となった場合、いわゆる補修修復に関して纏めさせて頂ければと思います。