象牙質知覚過敏症の治療

こんにちは!歯科医師の平山です。

 前回、象牙質知覚過敏症の発生原因についてお話しましたが、今回はその続きからお話しします!

象牙質知覚過敏症の発生原因

  1. エナメル質とセメント質の位置関係
  2. 不適切なブラッシングや歯間ブラシによる摩耗
  3. 歯周病
  4. 酸性飲食物の嗜好
  5. ドライマウス(口腔乾燥症)
  6. 胃酸の逆流
  7. オーバースケーリング・ルートプレーニング、超音波スケーラーの誤用

目視できない歯肉縁下のスケーリングが適切に実施されないと、歯根面を削り過ぎたり、歯肉に過度の傷を生じます。これらのことが象牙質知覚過敏症につながります。

また、超音波スケーラーも、パワーの設定、チップの選択、水流調整の選択などを間違うと、歯や歯肉に損傷を与えることがあります。

  1. 歯の漂白

歯の漂白後、エナメル質に存在するエナメル葉内の有機質が漂白剤(高濃度の過酸化水素や過酸化尿素)により溶解され表層の微小な亀裂が象牙質に達し、エナメル質表層の刺激が象牙質まで伝播することにより直下の象牙細管内の組織液の移動が起こることにより知覚過敏が生じます。

  1. 咬合異常

咬耗が進むと咬合力が歯をすり減らす横方向の応力になることがわかってきました。そこになんらかの原因で歯肉退縮が起こり応力が歯頚部に集中して、表面の微細なアパタイトを徐々にはがしていくことが、くさび状欠損の引き金になります。くさび状欠損の進行により象牙質の露出が起こり知覚過敏となります。

 

象牙質知覚過敏症の発生機序

象牙質知覚過敏症の発生機序としては動水力学説(Hydrodynamic Theory)が有名です。これによると、露出象牙質面に外部から刺激が加わることで、象牙細管内液の急速な移動が動水圧を生じさせて、象牙細管内側の求心性の自由神経終末を機械的に変形させ、活動電位が発生します。

 

象牙質知覚過敏症の治療

  1. 感覚を鈍麻する(鈍麻)
  • 硝酸カリウムを用いて歯髄神経への刺激伝達を阻害し知覚を鈍麻させる
  1. たんぱく質を凝固させ、象牙細管内液が動かないようにする(凝固)
  • 象牙細管内液のたんぱく質を凝固し、液の流動性を抑制する(5%グルタルアルデヒド、フッ化ジアミン銀)
  1. 象牙細管口を封鎖する(封鎖)
  • 象牙細管内部に結晶を形成し、細管を封鎖する(乳酸アルミニウム、シュウ酸カルシウム)
  • 接着性モノマーやレジン系の材料などにより、露出した象牙質の表面を覆う。
  • フッ化ナトリウムによる象牙質表面の石灰化促進により象牙細管を封鎖する。
  • 歯質との反応により耐酸性の層を形成する(耐酸性ナノ粒子)
  1. レーザー治療
  • 各種レーザーによる治療
  • 透過光:歯髄神経に対するレーザーの疼痛緩和効果を利用したもので、歯髄までレーザー光が到達する必要性があるため、用いるのは組織透過型レーザーに限られる。低出力での照射のため、照射時の疼痛がないメリットがあるが、効果は一時的であることが多い。
  • 高出力:象牙質溶解により露出した象牙質表面をレーザーにより溶融し、細管口を塞ぐ方法。高出力での照射となるため、亀裂の発生や歯髄に及ぼす熱の影響などのデメリットも多い。原則として局所麻酔が必要である。
  • 低出力:象牙細管内のたんぱく質を凝固し、流動性を抑制させて刺激の伝達を遮断する方法で、持続性があり、安全かつ有効な遮断である。
  1. 咬合異常を治療する
  • 上下顎の咬合を適正化する。

象牙質知覚過敏症の治療