う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶその4

 こんにちは。
 青葉会、歯科医師の角田です。
 本日は前回に引き続き、日本歯科保存学会より発行されています、う蝕治療ガイドライン第2版より、その内容を纏めさせて頂きます。前回は象牙質まで達した`深い虫歯`において治療の意思決定に関わる内容でしたが、今回はう蝕をどこまで除去するのか、その判断基準と根拠についての内容となっています。
 
 第Ⅲ部、象牙質う蝕への切削による対応にて、以下のクリニカル・クエスチョン(CQ)が提唱されています。
 
 CQ7歯質の硬さや色は、除去すべきう蝕象牙質の診断基準となるか。
 CQ8う蝕象牙質の除去にう蝕検知液を使用すべきか。
 
 う蝕の除去基準は、現在の歯科においては確立されていません。歯科医はう蝕の硬さ、着色などを総合的に踏まえた上で、術者の主観的な判断の下にう蝕を除去しています。う蝕は感染症であり、出来得る限りその感染部分を除去する事が重要となります。
 
 象牙質う蝕においては、脱灰による軟化が第一に先行し、その次に着色が起こり、最も遅れて細菌感染が続くとされています。その為に、術者の手指感覚を頼りに軟化、着色した部を全て除去すれば結果的に細菌感染した象牙質を全て除去する事は可能です。しかしその方法では将来的に再石灰化が可能である非感染歯質をも除去する事にも繫がる為に、オーバートリートメント気味であるとも考える事が出来ます。歯質を過剰に切削する事は、歯髄の炎症に繫がる可能性も考えられますし、現在の主流となる考え方であるMIの考え方にもそぐわないと考えられます。
 
 いかに着色部、軟化部を残した上で感染象牙質のみを除去するか。感染象牙質を判別する客観的に識別する方法として、1%アシッドレッドのポリプロピレングリコール溶液のう蝕検知液が挙げられます。この検知液の染まる部位は感染歯質と考え、その部位のみを切削し除去するという考え方です。
 
 現在のところ、う蝕検知液以上に客観的に感染象牙質を判別出来る方法はないとされています。ガイドラインに掲載されている研究では、う蝕検知液を使用せずにう蝕を除去した際、経験年数15年の歯科医師でさえも13%のう蝕の取り残しがあったとされています。なればこそ、積極的にう蝕検知液を用いてう蝕を除去する事は、う蝕の取り残しを防ぐ為にも重要と言えると考えられます。
 
 今回は、象牙質まで進行してしまった深い虫歯の治療について纏めさせて頂きました。次回もう蝕治療ガイドライン第2版の内容を纏めていければと思いませうので、よろしくお願いします。