インプラントは安全なの?

みなさんこんにちは、歯科医師、関です。2月ももうすぐ終わりを迎えて、だんだんと暖かくなり春の兆しを感じる今日この頃ですね。今年の仙台の冬は、本当に雪が降る日が少なく、とても過ごしやすかったですね。新潟生まれの自分としては雪が積もらないのも逆に何となく寂しいものです。

さて、今回のテーマはインプラントの安全性についてです。みなさん、インプラントと聞くと何となく怖いというイメージがあるのではないかと思います。色々とニュースで危険だと取りざたされていたり、過去にインプラント手術で死亡事故が起きたこともありますよね。

しかし、それでもインプラント治療が行われるのは、インプラント治療に高い有効性があるということはもちろんのこと、歯科医師が安全性を十分に確立した上で行っているからでしょう。

もちろん、インプラント治療は顎骨に穴を開け、人工物を埋め込む外科手術を伴い、一定の侵襲があります。インプラント手術のトラブルには、全身状態の悪化、感染症の問題、解剖学的構造(血管・神経など)の損傷が考えられます。

先月、先々月の豆知識でインプラント治療の制限、注意点のお話しをした通り、全身の健康状態が優れない方は行うことができませんし、疾患の状態を十分に手術可能な状態にコントロールする必要があります。今回は残りの2つの感染症、解剖学的構造の損傷について述べていきたいと思います。

①感染症対策

一般的な歯科治療においても感染症対策のため、治療器具の滅菌・消毒は十分に行われていると思いますが、大きな侵襲を伴うインプラント手術においてはより厳重な感染対策を行います。手術器具が滅菌されているのはもちろんのこと、手術領域に触れる部分はすべて清潔にするため術者は滅菌ガウンと滅菌グローブを着用し、患者さんは滅菌布で覆います。さらに、埋入されるインプラントはメーカーにより滅菌、2重包装されており完全に無菌です。感染防止のため、術後は抗生剤を服用してもらいますが、免疫力の低下が懸念される方は、術前に抗生剤を予防投与する場合もあります。

②解剖学的構造の損傷

インプラント手術で注意しなければならない解剖学的構造には、上顎洞、切歯管、大口蓋孔、下顎管、オトガイ孔、舌下動脈などがあります。動脈を損傷すると出血多量でショックや窒息が起き、命の危険があります。神経を損傷すると麻痺、知覚異常が出現します。上顎洞を損傷すると鼻漏や鼻に違和感・疼痛が残ります。

いずれにしろ、これらの損傷を絶対にしないように歯科医師が解剖学的構造を十分に把握、理解する必要があり、事前のレントゲン検査をもとに十分に安全な治療計画を立てます。また、現在ではガイデッドサージェリーと言い、計画した部位以外の顎骨を削らないようにドリルの動きを制限するような、より安全性の高い治療法もあります。

次回は、このガイデッドサージェリーについてより詳しく述べていきたいと思います。