う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶその3

こんにちは。 歯科医師の角田です。

前回までは、歯の比較的に浅い部分、エナメル質に留まる様なう蝕における、削らない治療、主にフッ素塗布やシーラントの有効性をう蝕治療ガイドライン第2版の第Ⅱ部から内容を纏めさせて頂きました。今回からは比較的に深いう蝕、エナメル質を超えて象牙質まで達してしまったう蝕の治療について、う蝕治療ガイドライン第2版の第Ⅲ部より纏めさせて頂きます。

歯医者としては馴染み深いう蝕ですが、実際に治療でう蝕に直面した際には、考える事は数多くあります。そのう蝕はどれ程の大きさなのか、削った方が良いのか、削るとすればどの程度削るべきなのか、そしてどの様な手法で削った部分を補うべきなのか、等です。

CQ:6 切削の対象となるのはどの程度に進行したう蝕か。

推奨:以下の所見が複数認められる場合はただちに修復処置を行う事が望ましい。

1)歯面を清掃乾燥した状態でう窩を認める。

2)食片圧入や冷水痛などの自覚症状がある。

3)審美障害の訴えがある。

 4)エックス線写真で象牙質層の1/3を超える病変を認める。

 5)う蝕リスクが高い。

先の疑問に対する、一つの指標が上記のCQの項目となっています。その根拠となるのは、う窩の大きさやレントゲン所見など、歯科医師による客観的な評価だけではありません。審美性や疼痛といった患者の主観による希望も切削の意思決定に関わる重要な因子となっています。しかし、本項目の中でも興味深いのは五番目に挙げられている項目の『う蝕リスクの評価』ではないでしょうか。

う蝕のハイリスク因子として、う蝕治療ガイドラインには以下が挙げられています。

全身的既往歴

糖衣錠の服用、口腔乾燥症状、身体障害

歯科的既往

多数の修復歯の存在、頻回な再修復

口腔衛生状態

少ない口腔清掃回数、矯正装置や義歯の装着

特に口腔乾燥、唾液の量に注目されている他に、義歯や矯正装置、詰め物といった修復物の有無もう蝕のハイリスク因子として挙げられています。患者がこういったリスクの項目に当て嵌まる場合には、比較的に小さな象牙質う蝕においても積極的に切削治療を試みる一つの根拠となるという事です。

以上、今回のう蝕治療ガイドライン第2版に学ぶその3では、比較的深いう蝕、象牙質まで達したう蝕に対して切削治療を行う意思決定の根拠について纏めさせて頂きました。