ドライマウスのケア方法

明けましておめでとうございます!歯科医師の平山です。皆さん今年もよろしくお願いします。

先月ドライマウスについてお話ししましたが、今回はドライマウスのケア方法についてお話ししたいと思います。

現在、口腔乾燥症の治療薬としてムスカリン受容体作動薬などが知られていますが、これらの薬剤の対象疾患はシェーグレン症候群に限られていることから、9割の非シェーグレン症候群ドライマウス患者が唾液分泌を亢進するような製品が期待されております。しかしながら、実際は口腔乾燥感を和らげるための保湿剤や人工唾液に頼るしかないのが現状であり、いろいろな製品が市販されています。

粘膜の保湿

ドライマウスでは粘膜の保湿が重要となります。口腔内の保湿は、保湿剤、保湿装置、居室の保湿によって行うことができます。粘膜の保湿は、口腔乾燥感を緩和させるだけではなく、保湿によって口腔粘膜の状態を改善させることが重要な目的となります。そのため、口腔乾燥感がただちに改善されないという理由で、保湿剤の使用を中断することは望ましくありません。

ドライアイの治療において、人工涙液の点眼により目の角膜上皮の異常が治癒し、このためにドライアイの自覚症状が改善されます。口腔についても同様に、保湿剤の保湿効果や保湿剤に含まれる薬効成分の効果によって、口腔粘膜上皮の異常の改善が期待されます。

  1. 保湿剤(湿潤剤)

水分を保持する性質を持つ物質、粘膜を覆う効果を持つ物質、唾液分泌を刺激する物質等を配合することにより、保湿効果が期待される製品です。

  1. 保湿剤配合の洗口液

ヒアルロン酸ナトリウムの含有により、ヒアルロン酸が多量の水分を保持する性質を利用した製品があります。ヒアルロン酸ナトリウムは、関節部の疾患に用いられることが多いですが、他にもドライアイに対する点眼薬や、眼科手術の際の補助剤としても用いられています。また、プロピレングリコールにも保湿効果が期待できます。ラクトフェリン等の抗菌酵素を含む製剤もあります。

洗口液の使用法は、適量を口腔に含み、20~30秒すすいでから吐き出します。

  1. 保湿ジェル

ゼリー状で、口腔内を湿潤させます。ポリグリセルメタクリレート等の湿潤効果のある成分が含まれています。リゾチーム、ラクトフェリン、グルコースオキシターゼ、ラクトパーオキシダーゼ等の抗菌作用が期待できる成分を含むものもあります。

保湿ジェルの使用方法は、食後および就寝前の歯磨きの後に、指先に約1cmの量を乗せ、指先または舌で、まんべんなく口全体に広げます。義歯を使用している場合は、義歯床の裏側に塗布すると、比較的効果が長持ちするようです。

  1. 保湿スプレー

口腔乾燥感を感じた際に、口腔内に数回スプレーして使用します。うがいができないときに効果的です。保湿成分としてヒアルロン酸を含むものや、甘味や酸味成分の刺激で唾液を分泌させるものがあります。カテキン等の抗菌物質を含みMRSAや口腔内細菌等に対する抗菌作用を目的とした、口腔浄化スプレーもあります。口腔浄化スプレーの場合、口腔内に行き渡らせてから吐き出します。

  1. 人工唾液

唾液の代わりに口腔内を湿潤させます。口腔粘膜上皮細胞の乾燥防止と、細胞の正常な機能を保持させるためのものです。

シェーグレン症候群および頭頸部の放射線照射による唾液腺障害に基づく口腔乾燥症による諸症状の緩和に適応がある医薬品で、病院での処方が必要です。

  1. 保湿装置(モイスチャープレート)

義歯に水分を保持する部分を設けたものです。義歯タイプや、歯に被せるナイトガードタイプがあります。保湿装置と粘膜の間に置いたガーゼに水分や保湿ジェルを含ませて使用します。

  1. その他

口腔の保湿のために、夜間の口呼吸を防止するテープも市販されています。また、居室を保湿することで、口腔内も保湿されます。特に冬は乾燥しやすいので注意が必要です。