う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶその2

こんにちは。歯科医師の角田です。
今回は前回のう蝕治療ガイドライン第2版に学ぶその1の続編となっています。前回では主に、エナメル質初期う蝕に対するフッ化物塗布の是非について纏めましたが、今回はその結論の根拠となる論文から紹介させて頂きます。

フッ化物塗布が、エナメル質初期う蝕を優位に抑制する。この結論の根拠となる論文が、ガイドライン内に示されています。その研究では、う蝕ハイリスク患者239人に対し、口腔衛生教育とフッ化物塗布を行った実験群120人(初期う蝕数604)と、口腔衛生教育のみを行った対照群(初期う蝕数585)の、12ヶ月後のそれぞれの群での初期う蝕の進行を評価しています。結果としては、フッ化物塗布を行った実験群では、う蝕が進行した割合が3.5%、変化しない(no change)、或いは不活化(inactive)した割合が96.5%となり、フッ化物塗布を行わなかった対照群においては、う蝕が進行した割合は10.4%、それ以外の割合は89.6%となりました。
よって、フッ化物塗布がエナメル質初期う蝕の抑制に有効であると解ります。

それでは、次のCQです

CQ2:エナメル質初期う蝕に対して、シーラントは有効か

シーラントとは、臼歯部の咬合面裂溝に材料を填塞する事により、う蝕の発生を予防する処置の事を指します。一般的にはう蝕の発生を予防する為のシーラント処置ではありますが、エナメル質初期う蝕、つまりはエナメル質の一部にに留まる様なう蝕が裂溝部に存在する場合にも、シーラントはう蝕の進行抑制に有効であるか、というCQです。

本CQの結論ですが、シーラントはエナメル質初期う蝕の進行抑制に効果があるとされています。

この結論の根拠となる論文ですが、ガイドラインには米国ミシガンにて103人の小学生に対して行われた試験が挙げられます。本試験では、初期う蝕380面に対してシーラント処置を行い、56面を非処置の状態で5年後の経過を確認しています。結果、5年後にシーラント処置を行った380面中、41面(10.8%)においてう窩の進行が確認出来たのに対し、非処置面56面の内、29歯面(51.8%)でう窩の進行が確認出来ました。
よって、エナメル質初期う蝕の咬合面にシーラント処置を行う事は、う窩の抑制に有効であると解ります。

以上、エナメル質初期う蝕への対応、フッ化物塗布とシーラント処置の有効性について述べさせて頂きました。次回からはエナメル質初期う蝕より進行してしまった状態、象牙質う蝕における内容について、う蝕治療ガイドラインに掲載されている内容について纏めさせて頂きます。