う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶ その1

う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶ その1

 

こんにちは。歯科医師の角田です。

今回の歯の豆知識では、2015年に日本歯科保存学会より作成された、う蝕治療ガイドライン第2版について、私なりに要約した内容を纏めさせて頂きます。尚、本ガイドラインの詳細版については、

http://www.hozon.or.jp/member/publication/guideline/file/guideline_2015.pdf

にて自由に閲覧可能となっています。

 

まず初めに、ガイドラインとは何か、について説明をさせて下さい。

ガイドラインとは、直訳すれば指針に当たります。そして治療におけるガイドラインとは、定義として『医療者と患者が特定の臨床状況で適切な決断を下せる様に支援をする目的で、体系的な方法に則って作成された文書』となっています。つまり、根拠としての質の高い論文、実験の内容を踏まえた上で推奨される治療法について、体系的に纏められた文書の事を指す訳です。

 

う蝕治療ガイドラインでは、8つの部において、数々の臨床状況に応じたCQ(クリニカルクエスチョン)を定めています。CQとは、臨床的疑問の事を指します。例えばう蝕を治療するに当たり、切削した方が良いのか、切削するならばどの程度行うか、詰める際には何の材料を用いるべきか、などと意思決定の際に関わる疑問が挙げられます。

 

今回の歯の豆知識では、このCQについて個別に学んでいく形となります。

まず挙げさせて頂くのが、本ガイドライン第2部、エナメル質の初期う蝕への非切削での対応におけるCQです。

 

CQ1:永久歯エナメル質の初期う蝕に、フッ化物の塗布は有効か

 

まずエナメル質初期う蝕とは何でしょうか。う蝕治療ガイドラインでは、エナメル質初期う蝕を象牙質には達しない、エナメル質に限局した病変としています。すなわち従来のう蝕区分ではCO、C1とされているものを指します。

COは視診において、エナメル質に実質欠損を伴わず、着色や白斑、白濁を呈している状態を表しますが、ICDASと呼ばれる国際的なう蝕診断、評価システムではこのCOをCODE1(乾燥状態における、エナメル質の目視可能な初期変化)、CODE2(湿潤状態における、実質欠損を伴わないエナメル質の明瞭な変化)と2つに区分する事で、より初期う蝕の状態を詳細に区分しています。

また、C1とはエナメル質に留まる、実質欠損を伴う病変とされています。

 

本CQでは、永久歯のエナメル質初期う蝕に、フッ化物の塗布は有効か。という事ですが、一般的にう蝕は進行するか、停止するか、回復するかしかありません。問題となる事項は、初期う蝕に対してフッ化物を塗布する事により、う蝕はどういった機転をとるかという事です。

 

結論を先に述べると、エナメル質初期う蝕に対してフッ化物の塗布を行った際には、フッ化物塗布を行わなかった場合と比較して優位に、う蝕の進行が抑制される結果となります。

 

う蝕治療ガイドライン第2版に学ぶ その2に続く。