インプラントと骨代謝

みなさんこんにちは、歯科医師、関です。

11月も終わりになり、寒さも本格的になってきましたね。今年の冬は暖冬になるといわれていますが、どうなのでしょうか。個人的には寒いのが苦手なので是非とも暖冬になってほしいですね。

 

さて、今回のインプラント解剖学のテーマは、『骨代謝』についてです。

骨代謝とは、すなわち骨における新陳代謝のことです。一見静的に見える骨組織ですが、実は、細胞レベルでは絶えず破壊と形成が繰り返されている動的な組織です。

歯科治療とくに、顎骨に直接関与するインプラントにおいて、骨代謝を理解することは非常に重要なことと言えるでしょう。

 

○骨組織の構造

骨組織は、リン酸カルシウムなどの無機質を多量に含む硬い骨基質から大分部ができています。その内部は小さな無数の小腔がみられ、小腔には骨細胞が存在しています。骨細胞同士は互いに突起を伸ばして繋がっており、情報伝達をしています。さらに、骨の表面は骨膜といわれる軟組織に覆われており、ここに新たな骨をつくる骨芽細胞と骨を破壊する破骨細胞が存在します。

通常時にも絶えず破骨細胞が古い骨を溶かして壊し、骨芽細胞が新しい骨をつくることで健康な骨組織が維持されています。

骨細胞はこの骨芽細胞と破骨細胞の働きを調整することで、骨代謝をコントロールしています。

 

○メカニカルストレスと骨代謝

一見静止しているように感じる骨組織は、骨代謝が絶えず行われており、吸収と形成がバランスよく行われて形態を維持しています。この骨の形態の維持にメカニカルストレスが深く関わっていることが分かってきました。骨にメカニカルストレスが加わると、骨細胞の細胞突起表面にずり応力が加わり、それを骨細胞が認識します。これにより骨細胞は、骨表面の骨芽細胞や破骨細胞にシグナルを送り、その活動の大小を制御していると考えられています。メカニカルストレスとは力学的な力、顎骨でいえば咬合による力です。

これは歯科医師であれば身近に感じるもので、歯の喪失による骨吸収、ブラキシズムによる下顎隆起はこの最たるものです。歯を失い咬合力がかからなくなった部分の骨はなくなり、逆に過大な咬合力がかかる場合はそれに対応するため骨を増やすわけです。

 

○インプラントと骨代謝

骨の中に直接埋め込まれるインプラントは、その周りにしっかり骨ができて維持されることが長期予後のために必要不可欠です。

先ほどの例から、咬合力がかからないと骨はなくなり、強くかかると骨が増えることが分かったと思いますが、強すぎる力がかかると耐えきれず逆に吸収に転じます。歯根膜がある天然歯では咬合力を制御することできるため、過大な咬合力がかかると気づくことができますが、歯根膜のないインプラントではオーバーロードとなり骨吸収を起こすことがあります。

そのため、インプラントを入れた後は歯科医院で定期的に咬み合わせの確認をする必要があると思います。