フッ化物含有製剤

こんにちは!歯科医師の平山です。

 

「虫歯の予防にはフッ素」というワードはCMなどでもよく流れており、皆さんもなんとなく知識として持っているのではないでしょうか?

でもなぜフッ化物はう蝕予防に効果があるか、詳しくは知らない方も多いかと思います。今回はフッ化物についてお話ししたいと思います!

 

フッ化物は、う蝕の予防に対して効果的であることから、幅広く使用されています。

フッ化物の効果が最も高い時期は、う蝕に罹患しやすい小児期です。萌出期と形成期の歯はフッ化物への反応性が高く、歯表面へのフッ素取り込み量が大きい事からこの時期に汎用されます。

また、歯肉退縮により根面が露出すると、エナメル質の臨界pH5.5に対し、根面(セメント質、象牙質)の臨界pH6.2と高いことから、根面はエナメル質よりも先に溶け出してう蝕を発生しやすくなります。そこで、近年では、歯周病患者に多く見られる根面う蝕の予防のために、メンテナンス期の治療で行われるPMTCにはフッ化物が応用されています。

更に、高齢になると高血圧や糖尿病などなんらかの全身疾患のために、薬を常用しているケースが多く見られます。それらの薬の副作用としてう蝕を防ぐ機能を持つ唾液の減少が起こるために、う蝕のリスクが高くなります。

このように、フッ化物はう蝕が急増する小児期から高齢者まで口腔の健康のために幅広く使用されています。

フッ素はフッ素単体で存在することはまれで、自然界では通常、フッ化ナトリウムやフッ化第一スズといったフッ素含有化合物の「フッ化物」として広く存在しています。

フッ化物が歯質を強化して耐酸性を向上させる効果は、図に示したように、酸に溶けにくくする「フルオロアパタイトの生成」、ハイドロキシアパタイトが安定する「結晶性の向上」、カルシウムが再び歯に沈着する「再石灰化の促進」の3つの作用によります。

また、フッ化物は歯だけでなく微生物の解糖系にも作用するので、歯の攻撃因子となる酸の産生を低下させるという働きも持っています。

 

 

う蝕予防のメカニズム

 

  1. 歯質強化・耐酸性の向上

 

1)フルオロアパタイトの生成、結晶性の向上

エナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)にフッ化物が作用してフルオロアパタイト(Ca10(PO4)6F2)が生成されると、OHイオンがFイオンに置換されます。そして、不安定だったOHイオンのの並び方がしっかりしてエナメル質は安定した構造となり、歯質が強化され酸に溶解しにくい構造になります。

2)再石灰化の促進

Fイオンの存在により、ハイドロキシアパタイトの結晶成長速度が増し、再石灰化を促進します。

 

  1. 細菌作用(酸産生)の抑制

 

フッ化物は解糖系に必要な酵素エノラーゼの活性を阻害して、糖の分解を抑制します。そのため、口腔細菌は糖を利用することができず、酸が産生されにくい口腔環境となります。

 

フッ化物応用によるう蝕の予防機序

 

フッ化物に対して深い知識を持つことで、皆さんの日常にフッ化物を応用していただけたらと思います!