インプラントは歯と何が違う?

みなさんこんにちは、歯科医師の関です。

10月ももうすぐ終わりを迎え寒さも増していく日々ですね。秋と言えば、食欲の秋、芸術の秋などと言いますが、私は最近とても運動不足なので、個人的には今年はスポーツの秋にしたいですね。

 

さて、今回、第4回インプラント解剖学講座のテーマは『インプラント周囲組織』です。

突然ですが、天然の歯とインプラントはどこが違うでしょうか?

それはもちろん人体の一部と人工物なので根本の構造、構成物質が全然違いますよね。

しかし、とても綺麗に作られたインプラントの上部構造(被せ物)は天然の歯と見間違うほど精巧で、しっかりとした咬み合わせをつくられたインプラントは天然の歯と同じように咬むことができます。

すなわち、素人から見たら天然の歯とインプラントは違いを感じないものになるということです。

 

ただし、天然の歯とインプラントとで明確に異なる部分があります。それが今回のテーマ、『周囲組織』の構造です。

 

周囲組織とは、歯、インプラントの周りの組織ということで、歯肉、顎骨などにあたります。

ではまず、天然の歯の周囲組織から見ていきましょう。

このように、天然の歯の根っこは顎の骨の中に埋まっており、上の部分には歯肉があります。

詳しく見てみると、歯と骨は直接接しておらず、その間には歯根膜と呼ばれる靭帯があり歯と骨を繋いでいます。歯根膜の中には歯と骨を繋ぐ線維だけでなく、無数の神経、血管が走っています。

さらに、歯と歯肉は単に接しているのではなく部分的に結合、接着しています。

 

次にインプラント周囲組織です。

インプラントも本体のインプラント体は顎の骨の中に埋まっていますが、天然歯にみられるような歯根膜の介在はなく、直接骨と接しています。

そして、歯肉はインプラントとは結合しておらず、言わばそこに乗っているだけの状態です。

 

このように天然歯とインプラントの周囲組織は似て非なるもので、歯根膜組織の有無、歯肉の接着の有無が大きな違いです。

では、この違いがどのような違いにつながるのでしょうか。

1つは、咬む力のコントロールです。天然歯には歯根膜があり、歯根膜の中を走る神経は感圧機能を持ちます。歯根膜は、咬むことで歯にかかる力を感じ取り、過大な力が歯にかかりすぎないよう無意識に咬む力をコントロールさせます。

インプラントにはこの歯根膜がないため、過大な力がかかってもコントロールされず、インプラントや骨に負荷をかけてしまいやすくなります。そのため、インプラントでは歯科医師が適切な咬み合わせを与えることがとても重要になります。

もう1つは、感染への抵抗性です。天然歯には歯肉の接着があり、これが歯周組織内への細菌の侵入の防御に役立っています。インプラントには歯肉との接着がないため抵抗性は弱いと言えるでしょう。もちろん、天然歯でも汚れがたまり歯肉炎になれば、この接着は破壊され深部へ歯周病が進行するきっかけになります。インプラントで起きる周囲炎をインプラント周囲炎と言いますが、歯周病よりもインプラント周囲炎の方が進行しやすいため、十分なセルフケアと定期メインテナンスがより必要になってきます。

 

このように、天然歯とインプラントの歯周組織には大きな違いがあり、注意する必要があります。

(逆に、天然歯に比べインプラントが優れていることで言えば、インプラントは虫歯にならないということでしょうか。)

現在、天然歯と同じようにインプラントに歯根膜を持たせたり、歯肉を接着させるような研究は頻繁に行われています。そして、一定の成果がみられているようです。

今回挙げたインプラント周囲組織の欠点が克服させる日はもしかしたら近いかもしれません。